約 2,287,963 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/19.html
ハルヒ「週末にスキヤキパーティーするわよ」 古泉「いいですね、僕は鍋を用意しますよ」 みくる「私はお野菜もってきますね」 キョン「野菜は多いですからね俺と分担しましょう、朝比奈さん」 長門「…肉、もって来る」 ハルヒ「じゃあ、私はたま…」 古泉「卵も僕が持ってきましょう」 ハルヒ「えっと、マロ…」 みくる「マロニーと蒟蒻は私が用意しますね」 ハルヒ「やっぱり白…」 長門「米…持ってくる」 キョン「やっぱ友達同士で持ち寄るってのはいいな」 一同「ハハハ」 ハルヒ「……」 ハルヒ「キョン、すき焼きするからお肉買ってきて」 キョン「…………」 ハルヒ「キョン!あんた人の話聞いてるの!?もういいわ、古泉君よろしく」 古泉「マッガーレ」 ハルヒ「…………有希、頼める?」 長門「だまれ」 ハルヒ「うっ…み、みくるちゃん頼める?」 みくる「なんであなたのいうことを聞かなくちゃいけないんですかー?」 ハルヒ「わかったわよ。私が行くわよ…ぐすっ」 バタン 古泉「マッガーレ」 ハルヒ 「ねえキョン、昨日私が言ったテレビの心霊特集見た? ほんと子ども騙しにも程があるわ! あんなの誰が見たって……」 キョン 「え、あ……いや、悪いな……見ようと思ったんだけど、妹怖がるから見れなかったんだ」 ハルヒ 「え……あ、ああ……そう……仕方ないわよね……」 キョン 「悪いな」 ハルヒ 「ん……別に」 キョン 「…………」 ハルヒ 「…………」 キョン 「…………」 ハルヒ 「…………………………………それでね」 キョン「あれ……? 古泉まだか……?」 ハルヒ「古泉君、なんか急にバイト入ったからこれないらしいわよ」 キョン「そうか、じゃあ暇だな…………そうだ、たまにはオセロしないか? お前とはやったことないよな?」 ハルヒ「……仕方ないわね、やってあげるわ、じゃあ負けたほうは罰ゲームね」 キョン「……キツイのは無しだぞ、いいな?」 ハルヒ「あら、キョンは負けるの怖いの? そりゃそうよね、キョンの頭で私に勝つなんて……」 キョン「フンッ、俺の秘技【四方返し】を見てもそんなこといってられるか? ……ちょっと待ってろ、用意するから……」 ハルヒ「ふーん、なかなか楽しませてくれそうね……!」 キョン「楽しむなんて生易しいもんじゃ……アレ……? ……あっ、オセロ昨日持って帰ったんだった」 ハルヒ「へ……?」 キョン「悪い、オセロねえや」 ハルヒ「…………」 キョン「……暇だな~」 ハルヒ「…………(ワナワナ)」 ハルヒ「あ~も~暇ね~……」 キョン「珍しく賛成だ」 ハルヒ「ん~……そうだ、キョン何か面白い話してよ」 キョン「……急に言われてもなあ……」 ハルヒ「別にいきなり面白いのじゃなくてもいいわよ、ちゃんと笑ってあげるから」 キョン「……」 キョン「……昔さ、俺んちの隣のおじいちゃんが死んじゃって……」 ハルヒ「アハハハッ!! それサイコー!!」 キョン「…………」 ハルヒ「アハ…………ハ」 キョン「…………」 ハルヒ「…………」 キョン「……ダメだ……」 ハルヒ「うっ……ひっく……ごめんなさい……ぐすっ……」 ハ「キョン、すき焼きするからお肉買ってきて」 キ「ああ…分かった」 ハ(珍しく素直ね…) キ「長門、行くぞ」 ハ「!?」 長「………(無言で頷く」 出て行く二人 ハ「………」 ハ「キョン、ガスコンロのガス切れちゃったから買ってきなさい」 キ「あぁ、分かった。長t ハ「有希は連れてかなくていいわよ!」 キ「………チッ」 ハ(露骨に舌打ち!?) ハ「キョン、スレ落ちそうだから保守してきなさい」 キ「あぁ、分かった。長t ハ「有希は連れてかなくていいわよ!」 キ「………チッ」 ハ(露骨に舌打ち!?) 長「……チッ」 ハ(こっちも!?) ハルヒ「ねえキョン、スキヤキしたあとご飯いれる派?」 キョン「ああ、うちは餅とかうどんも入れるな」 ハルヒ「あ! お餅入れるとおいしいわよね! 分かる分かる!!」 キョン「ああ、そうだな」 ハルヒ「………」 キョン「………」 ハルヒ「………」 キョン「………」 ハルヒ「…………………………………………………それでね」 キョン「ん……でも、やっぱりハルヒって料理うまいな」 ハルヒ「えっ……! あ……と、当然よ、当然! 私はキョンと違って万能型だからなんでもできて当たり前なのよ!」 キョン「………そういうトゲのある言い方やめろよ、せっかく人が誉めてんのにさ……あ~あ……誉めて損した」 ハルヒ「え……? あ……あ、その……」 キョン「………じゃあそろそろ帰るわ、長門、手伝ったほうがいいか?」 長門「大丈夫」 キョン「そっか、悪いな、じゃあな」 ――パタン ハルヒ「あ……」 長門「……もっと素直になったほうがいい……」 ハルヒ「…………そう……よね……ハァ……」 ハルヒ「ねえキョン、なんでみんな部室に来ないのかしら?」 キョン「・・・・・IEの履歴は消しといたほうがいいぞ」 「それじゃあな、ショタコン」 ハルヒ「ねぇキョン!卵の黄身と白身どっちが好き?」 キョン「何だいきなり」 ハルヒ「いいから答えなさいよ!」 キョン「・・・キミが好きだ」 ハルヒ「ごめん聞こえなかったわ、もう一回言ってくれる?」 キョン「キミが好きだ」 ハルヒ「私も好きよ!キョン!」 キョン「そうか、あの口の中の水分を根こそぎハンティングする感が大好きなんだよ」 ハルヒ「いや・・・そうじゃなくて・・・」 キョン「ん?じゃあなんなんだよ。お、長門~今帰るのか~?丁度良い、茶でも奢るからちょっと付き合えよ」 長門「コクリ」 ハルヒ「・・・・・・・」 長門「・・・・私は白m」 ハルヒ「聞いて無いわよ!」 キョン「俺はSOS団を辞めるぞーハルヒー!!」 ハルヒ「そんな!?あんたのいないSOS団なんて意味ないわ思い直してキョン!」 キョン「じゃあ、お前も止めろよ。そうすれば一緒だろ」 ハルヒ「それもそうね。あんた頭いいわね。 それじゃあ、早速生徒会に知らせてくるわ」 キョン「やったな!これでこの部室は文芸部のものだ。 あの訳の分からない同好会以下の部ともおさらばだぜ!」 長門「…ブイ」 古泉「まったくあなたも人が悪いですね」 みくる「古泉君も止めなかったじゃないですか」 古泉「それもそうですね」 キョン・長門・古泉・みくる「アハハハハハハハハッ」 ハルヒ「待ってててね。キョン今帰るからね!」 鶴屋「今日は私のおごりさ、がっつり食べてくれにゃ」 ハルヒ「ほら、キョンこれ焼けてるわよ!はやく食べなさい!」 キョン「かってに俺のさらに乗せるな、汚らわしい」 「あ、朝比奈さん、それハルヒがひっくり返したやつです、食べない方がいいですよ」 「おい古泉、それは俺が愛情こめて焼いてるやつだ、勝手に食うな」 古泉「だから食べるんじゃないですか、ああ長門さん、それ、涼宮さんが触ったやつですよ」 長門「・・・ありがとう」 ハルヒ「らんららんららーん♪キョン食べてくれるかしら、私のおにぎり」 ハルヒ「あっれー?おかしいな?にけやの袋しかないや、ま、いっか」 学校で ハルヒ「キョン、おにぎり作ってきたから一緒に食べなさい!」 キョン「どうしたんだめずらし・・・・おちょくってんのかお前」 ハルヒ「え、な、なに?」 キョン「脇で握られたちぢれ毛入りおにぎりなんて食えねーだろ」 ハルヒ「え、いや、脇でなんて、それに、いま冬だしえ、いや」 ハルヒ「さあ、出来たわよキョン。たらふく食べなさい」 キョン「…何だこれは」 ハルヒ「何って見て分からないの?蕎麦よ、そ・ば。 今日は暑いからざる蕎麦よ。あまりの美味さに昇天するわよ」 キョン「…お前の気持ちはよく分かったよ」 ハルヒ「??」 キョン「俺が蕎麦アレルギーだってことを知って蕎麦を用意したのか。 昇天か、あやうく殺されるとこだったぜ」 ハルヒ「え、ちが」 キョン「黙れ殺人鬼!もう金輪際俺にちかづくんじゃねえ!あばよ!!」 ハルヒ「あっ、キョン待って!」 ズルズルズル 長門「刻み海苔がない。わさびの風味も足りないこれは蕎麦じゃない」 古泉「さあ、出来ましたよキョンタン。たらふく食べてください」 キョン「…何だこれは」 古泉「何って、見て分からないんですか?蕎麦です。 今日は暑いからざる蕎麦です。あまりの美味さに昇天しますよ」 キョン「…お前の気持ちはよく分かったよ」 古泉「・・・」 キョン「俺が蕎麦アレルギーだってことを知ってそばを用意したのか。」 古泉「はい。知ってます。」 キョン「?」 古泉「キョンタンが蕎麦アレルギーということで、そば粉を使わずに蕎麦を作りました。 苦労したんですよ。」 キョン「古泉・・・・・・俺の為に・・・・・・」 古泉「さぁ、たらふく食べてください!」 キョン「うう・・・・・・ありがとう古泉・・・・・・」 ズルズルズル 長門「白くて蕎麦にしては太い。むしろうどん」 ハルヒ 「もぅ!男同士でこすったり、さわったりして!!何が楽しいの!!ニンテンドーDSいっしょにやろうよ!」 キョン 「それ以上大声で叫ぶな。お前がいう言葉はすべて卑猥に聞こえる」 古泉 「それに、われわれはニンテンドーDSなんかしてませんよ。キョンたんをこすったりさわったりして遊んでいるんですよ」 ハルヒ「!! ちょっと・・・私の机とイスがないじゃない!」 ハルヒ「ねぇ朝倉さん、私の机がないんだけどどうにかしてよ。」 朝倉「うん、それ無理。」 ハルヒ「無理って・・・、あんた学級委員長でしょ!」 朝倉「死になさい。」 ハルヒ「・・・・・・」 ハルヒ「シャミセン~~~、ほれほれ~」 シャミセン「にゃ~」 ハルヒ「こっちこっち~~」 シャミセン「にゃーにゃー」 ハルヒ「やっはりあげなーいっ!」 キョン「おい、あんまいじめんなよ」 シャミセン「シャー!!」 ハルヒ「キャー!」 キョン「おい、ぱ、パンツ見えてるぞ…///」 一応いじめもののつもりだ ハルヒ「みんな!今度の日曜日に探索に向かうわよ! もしかしたら宇宙人とか何か出るかもしれないわ!」 みくる「こいつはくせぇッー!電波のにおいがプンプンするぜッーー! こんな電波には出会ったことがねえほどなァーーーッ 七夕で電波になっただと?ちがうねッ!!こいつは産まれてついての電波だッ! キョンくん 早えとこ病院に渡しちまいな!」 ハルヒ「な、そこまでいう必要ないじゃない!有希ちゃんは来るでしょ」 長門「これは試練だ 電波に打ち勝てという試練を受け取った」 ハルヒ「ひ、酷い みんなして酷いこと言わなくてもいいじゃない」 キョン「おい!これじゃあまりにもハルヒが可哀想だろう! 確かにハルヒは電波だがここまでいう必要がないじゃないか!」 ハルヒ「キョン…、それじゃ来てく【キョン】「だが断る」 部室から出て行く部員達、残されたハルヒ ハルヒ「私が何をしたっていうのよ・・・」 古泉「なんていうか……その… 下品なんですが…フフ…… 勃起………しちゃいましてね…………」 みくる「おめーなにキョン君たぶらかしてんだよーああ?!」 ハルヒ「すいません、私は恋しちゃだめってことですか?・・・・」 みくる「恋するなとは言ってないだろうが!!だったらキョン君以外でしろ!!わかったな!!」 ハルヒ「・・・・・・・はい」 みくる「明日も虐めてこいよ!!か弱い女の子に男は弱いんだからな!!」バタバタバタ ハルヒ「はい・・・・」 ハルヒ「キョン・・・・・・・・」 ハルヒ「やめて!電源コードを鼻にささないで!!」 みくる「ふふふ、いくわよ?スイッチ…」 ハルヒ「やめてえええぇぇぇ」 みくる「オン!!」 かちっ みくる「あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば」 ハルヒ「ひ、ひゃあぁぁあああ」 キョン「ハルヒ・・・お前に言っておくことがある」 ハルヒ「なによ」 キョン「オレは阪中さんのことが好きだ」 ハルヒ「!?と、ととと突然なに言い出すのよ!」 キョン「オレは本気だ。2番目は朝倉だ。それはどうでもいいんだが、 どうしたら彼女と付き合えると思う?」 ハルヒ「あ、あんたなんかがあの子と釣り合うワケないでしょ! なんたって相手はお嬢様よお嬢様!顔だってかなりかわいいし!」 キョン「わかった。お前はアテにならなさそうだ。他をあたってみる」 ハルヒ「ちょ、ちょっとキョン!どこ行くのよ!」 キョン「ちなみにハルヒ、お前は12番目に好きだ」 ハルヒ「・・・・・・・・」 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしの日記見た!?」 キョン「黙れよ切れ痔女( ´,_ゝ`)」 ハルヒ「き、ききききき切れ痔じゃないわよ!キョンのバカあぁぁぁぁっ!」 ハルヒ「うわあぁぁ~ん!」 キョン「じゃあ俺が痔を治してやるよ」 ハルヒ「へっ?何を言って…きゃあ!ちょ…やめ…」 キョン「へへへ…なかなか綺麗なケツしてるな」 ハルヒ「アナルだけは!アナルだけは!」 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしの日記見たでしょ!? …見たんでしょ? 白状しろ~~~」 キョン「……いや…(お前に)興味無いし…帰るわ」 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしの日記み、見た!?」 キョン「えぇ、机に置いてあるあれ朝比奈さんの日記じゃなかったのか!?」 ハルヒ「やっぱ見たのね。この覗き魔」 キョン「プッ、お前の日記だったのあれクククッ…アハハ」 ハルヒ「何よ?笑われる内容は書いてないわよ、団長日誌なんだから」 キョン「ハハハ、だって乙女チックな文字にクマやウサギの手書きイラストだぜ」 ハルヒ「なっ、何よっ!!私だって女の子なんだからねっ、バカキョン!!」 長門「…かかと落とし!」 みくる「ふみゅ~~、ぃたいです~~」 古泉「ははは、空中モトヤチョープ!」 ハルヒ「ちょっ、ちょっと何すんのよ!!!」 ………… キョン「ハルヒ、空気読めよ…って言うだけ無駄か」 みんな「あはははははははは!!」 ハルヒ「うぇ~ん、腫れてるよ…」 ハルヒ「キョン、私の気持ちに気付いてくれるかな?」 長門「…それはない」 みくる「何ねぼけたこと言ってるんですかぁ?」 古泉「今日は差し入れを持ってきました。フンモッフベーカリーのカレーパンですよ。」 みくる「わぁ、知ってます。あそこのカレーパンって並ばないと買えないほど人気なんですよね。」 古泉「あそこのパン屋の主人とは古い付き合いでしてね、特別にとっておいてもらったんですよ。 さぁキョン君、どうぞ。」 キョン「あぁ、悪いな。」 古泉「朝比奈さんもどうぞ。」 みくる「はい、ありがとうございます。」 ハルヒ「気が利くじゃない古泉君!」 古泉「長門さんも。」 長門「・・・・・・」コクッ キョン「あれ?古泉、お前の分は?」 古泉「ちゃんと人数分買ってきたんですけどね・・・あ、気にしないでください。」 キョン「たぶんこの中にあつかましい奴が一人いるんだろうな。」 みくる「・・・・・・チラ」 長門「・・・・・・チラ」 ハルヒ「・・・・・・・あの、古泉君、私お腹いっぱいだから・・・・。」 ハルヒ「東中出身、涼宮ハルヒ。ただの人間には興味ありません。 このなかに宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら あたしのところに来なさい。以上。 あ、あと水虫です。」 一同「触んなや。」
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/574.html
第1章 ―春休み、終盤 結局俺たちは例の変り者のメッカ、長門のマンションの前の公園で花見をしている …はずだったのだが、俺の部屋にSOS団の面々が集まっているのはなぜだ? よし、こういうときはいつものように回想モード、ON 「我がSOS団は春休み、花見をするわよ!」 ハルヒの高らかな宣言を聞き、俺は少し安心した 春といえばハルヒの中では花見らしい もっと別のものが出てきたらどうしようかと思った ま、原因はさっきの古泉が付き合う付き合わないとか言っていたせいだろう 春は恋の季節と歌った歌があったからな 「お花見…ですか?」 ハルヒの言葉に北高のアイドルにして俺のエンジェル、そしてSOS団専属メイドの朝比奈さんが反応した 「そ、お花見。言っとくけどアルコールは厳禁だからね!!」 アルコール厳禁を宣言するだけなのに何がそんなに楽しいのか、ハルヒの笑顔は夜空に栄える隅田川の打ち上げ花火のようにまばゆい光を放っていた 「わぁ…あたしお花見って初めてで…すごく楽しみ」 対抗意識を燃やしたわけではないだろうが、それに負けじと朝比奈さんの笑顔も春の花畑を優雅に舞う蝶が羽休めのためにチューリップに静かにとまったかのような清楚な微笑みだった 「このメンバーでお花見とは、楽しくなりそうで僕も楽しみです。」 ハルヒに従順なイエスマン、古泉も相変わらず微笑をうかべたまま反対しようとはしない もちろん長門はというと寡黙なその視線を分厚い文庫本に注いでるだけだ と、いうわけでSOS団お花見計画は満場一致で開催が決定された しかし、春休みに楽しい予定が入ったからといって時間の流れというのはその時間を頭出ししてくれたりはしない 目の前に立ちはだかるでっかい問題をどうにかするのが先だった そう、すべての学生の不倶戴天の敵 ―もうわかるだろう、奴の名は学年末テストだ どうにかしようとは思っていても結局至極当然のように放課後になると俺はここ、文芸部の部室にいるわけで、それは鳥が空を飛ぶように、魚が水の中を泳ぐように足が部室をめざすのだから仕方ない このままだと俺がリアルにハルヒの力によってではなく、俺の力不足によって1年生をループすることになるのですべてのプライドを捨て、部室でネットサーフィンしてばかりの我らが団長様に教えを請うことになった ハルヒはこんなのもわからないのといった表情で、それでいて勉強しているというのにどこか楽しそうで、それでも親切丁寧に俺に勉強を教えてくれた しかも、教えるのがやたらうまい 俺のバカ頭で、見ただけで頭が痛くなりそうな数式を頭を痛めつつだが、なんとか解けるまでにしてくれた なるほど、だからあの眼鏡の少年は将来タイムマシンに準ずるものを開発してしまえるのか だから画家にはならないでくれ もう二度と俺のモンタージュを書かないように、と思ったのは余談だ なんやかんやで学年末テストでは学年でとまではいかないがクラスで5本の指に入るくらいの点数を叩きだすことができた 担任の岡部もびっくり仰天だっただろう ハルヒ様様だ テストが終わればあとは春休みを待つばかりで俺はwktk…じゃなかった、期待して到来を待った 春休みまでの数日で俺が古泉にボードゲームでかなり勝ち越したことも付け加えておこう ―そして 春休み初日 天気予報で今年の桜開花予想を聞いたハルヒは終業式の日のうちに本日の集合を決めていた その場で話し合えばいいのにハルヒはいちいちみんなで集まりたいらしい その点に関しては俺も異論はないが なので俺がめずらしく一念発起し、たまには俺以外の―そうだな、古泉辺りが理想だが、 他の団員に喫茶店代を出させてやろうと思っても俺含むすべての団員がハルヒの願いによって操られるためいつでも最後に到着するのは俺だ なぜハルヒが俺におごらせたいのかは謎だが というわけで結局いつもの喫茶店に俺たちはいるわけだが1ついつもと違うことといえば長門が2つの合宿以外で見せなかった制服ではない私服姿でいることだ 淡い水色のワンピース その寒涼系のコーディネートはひどく似合っていて何かあるのかと勘ぐった俺の思考を一瞬止めた しかし、勘ぐったのは束の間、長門から特に特別な表情は読み取れなかったため特異な理由があるわけではなく、 ただたんに長門が‘そうしたかったから’このワンピースを着ていると悟った俺は「よく似合っている」の一言で片付けることにした ハルヒはというと春というより夏に近い格好で、ノースリーブシャツにキュロットといった服装 愛しのマイエンジェル、朝比奈さんはタートルネックにスリットの入ったロングスカートとこれまた何ともそそる格好をなされていた 蛇足だが古泉はワイシャツにジーパン、そのうえにスプリングコートを羽織っていた それが道行く女性の視線を集めたのはいうまでもない 「今年の開花予想は4月3日だって。例年より早いらしいけど、地球温暖化の影響によって東京の桜はかなり早く咲くらしいの。 それを考えると騒ぐ程のことではないってテレビでいってたわ」 温暖化云々と地球環境問題のことを聞くと危惧するべきだろうが、俺は正直、ホッとしていた 学校が始まってからの開花だったらどうしようかと考えていたからだ これもハルヒの力によるものかもしれないのだが 「と、いうわけでキョン、場所取りお願いね、ちゃんと前の晩から徹夜するのよ」 さらりととんでもないことをぬかしたハルヒは穏やかな笑顔で俺を見つめた 仕方なく反論を用意した 「確かに場所取りは重要だがいくらなんでも一人で徹夜はひどいだろう、せめて…」 せめて古泉も道連れにと言い掛けたところでハルヒが口を開いた 「誰も一人で行けなんていってないでしょ?大丈夫」 そのあと、ハルヒは南極に白くまが、北極にペンギンが住み、地球の自転、公転が逆になっても耳を疑うようなことを言った 「あたしもいくわよ」 と、いうわけで何度かの市内探索パトロールを経て、4月2日夜、ハルヒに呼び出された俺は変り者のメッカの例の公園でハルヒとともにブルーシートを広げ、場所を確保している さすが変り者のメッカというべきか他にも数ヶ所で場所取りの人材が場所を確保している ちなみにハルヒが場所取りを立候補したのは「あんただけに今年の1番桜を見せるわけにはいかない、むしろあたしが見るべきよ」というものだった 次の日の昼頃に他の連中が来てドンチャン騒ぎをしたのだがハルヒが「やっぱり花見は満開のときがいいわね」と言ったため本日4月5日にもう一度花見が割り当てられたのだったが ―雨 一言で片付く事象で花見は中止 なぜかSOS団は俺の家に集まっているといった状況になっている 回想モード、終わり 第2章
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/984.html
俺はホテルで朝を迎えた。 まず最初にすることは決まっていた。 昨日の出来事が夢でなかったかどうかだ。 洗面台へ行き、顔を確認する。 細い目をした二枚目がそこにいた。 9月9日 俺が古泉に替わって二日目。 昨日と同じく俺は古泉のままだ。 この調子ならおそらく古泉は長門に、長門は朝比奈さんに、朝比奈さんは俺になったままだろう。 地下の食堂でバイキング形式の朝食を取り、 早めにチェックアウトを済ませた。 普通、高校生が独りでこんなビジネスホテルに泊まっているところを見られたら 家出人として警察へ通報されそうなもんだが、 ホテルの従業員たちはとても丁寧な対応をしてくれた。 古泉の紹介のホテルだ。 きっと古泉のいう『機関』とやらが関わっていると思って間違いあるまい。 ホテルの玄関からでたすぐのところに、 小柄な女の子が柱にもたれかかりながら立っていた。 長門有希・・・今は古泉がその体に宿っている。 「よく眠れましたか」 「ああ、昨日はなんだか疲れたからな」 長門(古泉)と一緒に学校へ向かう。 一見他から見ると美男美女の組み合わせだが、 中身は男同士である。 「昨日はあの後大変だったんですよ。 あなたに電話した1時間後にですが・・・閉鎖空間が発生しました」 一瞬頭の中にあの灰色の空が浮かび上がる。 昨日古泉からの電話を受けて、一番に考えた「最悪の事態」を思い浮かべる。 誰もいない空間で複数の青い光の巨人がビルを壮大に破壊している。 灰色の空間は瞬く間に広がり、空と大地と海を覆いつくしていく。 「小さな規模でしたが出動は久しぶりのことでした。 僕……いや私もこの体で動けるのか少し不安でしたが、 やはり能力的には変化がなかったようで、無事神人を退治することが出来ました。 ですが、ことはそれだけでは収まらなかったのです。 今朝方……つまりつい先ほどになるんですが、 また閉鎖空間が発生したのです。 ……今度は少し大きめでした」 長門(古泉)が眉を下に下げてワンパクな子供に手を焼いている母親のような表情を見せる。 「ここのところは大変落ち着いていたはずだったんですが、 急にまた様子がおかしくなってきたのです。 数時間おきに閉鎖空間を生み出す……まるで中学生時代の涼宮さんを見ているようです。」 中学時代のハルヒがどうだったかは知らないが、 その頃の古泉の睡眠時間はだいぶ削られていたことだろう。 「おかげで今日も朝ごはん抜きです」 長門(古泉)は昨日のハルヒの言いつけを律儀に守ったといえる。 俺はそんな約束を今頃思い出しながら長門の姿で青い光の巨人と戦う古泉を想像していた。 そんなことがあったにも関わらずホテルのベッドでグースカ寝ていた俺こと古泉一樹の体は、 やはり超能力の素質はないと考えられる。 これでは閉鎖空間に閉じ込められてもあの巨人を倒すことは果たして出来ないであろう。 「ご飯といえばそうでした。昨日のお昼はきちんと食べられましたか? お金を渡すのを忘れていましたね」 といって長門(古泉)は定型封筒を手渡してくれた。 中には千円札が3枚ほど入っていた。 昼飯代にするには十分すぎるくらいだ。もちろん余ったお金は俺のものにすることにした。 このくらいの手当てをもらったところでバチは当たるまい。 クラスについて鞄を置く。 ホームルーム前の時間は朝の挨拶やら昨日のテレビ番組の話やらでくだらない賑やかさを演出していた。 特待生クラスといってもこの辺は俺のいた5組と同じだった。 こうしてみるとこの9組も5組もクラスの雰囲気は変わらないようだ。 目を瞑れば5組にいると錯覚してもおかしくはない。 どちらもどこにでもよくあるクラスといった感じで、 全国を探せば同じようなクラスは雨後の竹の子のように探しあてることが出来るだろう。 ハルヒが前に言っていた「自分が世界で一番楽しいと思っていたクラス出来事も、 日本の学校どこにでもありふれたものでしかない」というのも間違いではないのだろうな。 だがなぁ、ハルヒ。 お前がもし俺の体に乗り移ってみたらわかることだろうぜ。 お前のいるこのクラスにはいつも突拍子のない言動をするヤツがいて、 全く先の読めない思い付きでいつも周りを巻き込む事件を起こしていることをな。 しかもそいつは我侭で自分勝手で他人のことに一切関心をもたないくせに、 自分の願っていることを全て叶えながらも、 自分ではそのことに気づいていない変なヤツなんだ。 1年5組は世界で一番楽しいクラスではないかもしれないが、 世界で唯一お前がいるクラスなんだぜ。 2時間目の授業は物理だった。 なんと読んだらいいのかわからない記号が黒板にズラズラと陳列し始めた。 これでは授業を見ていても仕方がない。 外の景色を眺めてみると5組の連中がグラウンドを走っていた。 今日の体育は陸上か。 こうして自分のクラスを見学するのは初めてだな。 その中で一番目立つのはやはりこの女だろう、涼宮ハルヒ。 いつものように豪快なステップでハードルを……なぎ倒していた。 100mの間にあるハードル10個全てをなぎ倒してスタスタとベンチへ向かう。 普通、倒したハードルは自分で直すものだろうに…… この様子ならタイムを計るまでもなくクラスで一番だろう。 でもな……ハードルは倒さないで飛び越したほうがずっと早く走れることを知らないのか? 春にやった体力測定のときはうまく飛んでいたように記憶していたが気のせいだったか? それともアメリカのなんとかという選手を真似て走法を変えたのだろうか。。 その後を走っている男子も……今日は目立っていたな。 俺の中では今一番気になる存在だ。 「うんしょっうんしょっ」と掛け声が聞こえてきそうなおぼつかない足取りで、 今にもこけてしまわないか心配である。 ハードルの前に立つとハードルに手を掛け、 大きく足を投げ出しゆっくりと跨いでいく。 ハードルって飛び越す物じゃなかったっけ? 100mのハードルを50秒くらいかけて歩いているんじゃないだろうか。 周りの女子からはクスクスと笑い声が、男子からは野次のようなものまで飛んでいた。 ああ、こんな姿見たくない! 長門の力でこの数日間の記憶はなかったことにできないだろうか。 少なくとも野次を飛ばしていた男子は今後朝比奈さんに好かれることはないだろうがな! 背中に何かが当たるような違和感を感じふと脇のほうをみると、 後ろの席から左手がこっそりと伸びている。 小さな手につままれているものは、ノートの切れ端のようだった。 じゃあ、次のところを。と物理教師が言ったところでようやく理解できた。 さきほどから前の席から順番に問題を当てられている。 まさしく今前の席の女子の発表が終わり、 次は古泉一樹の番である。 って俺じゃないか! そう、もらったノートの切れ端には記号が並べられていたのだ。 しかもその記号にフリガナまで振ってある。 だから瞬時にこの状況を理解できた。 俺はすっと立ち上がりノートの切れ端の記号をさらりと読み上げ席に着いた。 もらったノートの切れ端を裏返し「ありがとう」と書いて そっと後ろの席へ返した。 後ろの席の人間に感謝したのは高校に入ってからは初めてのことだった。 4時間目の授業も無事に終わり昼休みになった。 俺はこの学校の食堂で飯を食ったことがなかったが、 食堂常連のハルヒいわく、 人気メニューは早い段階で売り切れるから最初のダッシュが肝心なのよ!だそうだ。 それではと立ち上がろうとしたとき、 右隣に座っていた女子からの視線に気づいた。 じっとこっちを見つめ何か言いたそうだ。 「……あ、あの、い、一緒にお弁当食べませんか」 見ると両手で抱えるような大きな弁当箱である。 その合図待っていたかのように周りの女子たちもさっと集まり始め、 みんなでお弁当交換会をしましょうという流れになった。 俺は何も持っていないのだから交換ではなく単なる譲渡だ。 ここからの流れは割愛する。 俺自身、古泉の自慢話ほど聞いていて腹の立つ話はないことをよく知っているからだ。 「もう元の体に戻らなくてもイーンダヨー!」 そんな天の声が聞こえてきても誰が俺を責めることができるのであろうか。 放課後、クラスの女子の全員とさよならを交わして部室へと向かう。 この後、大食い大会とやらに出なくてはいけないのはわかっているが、 朝も昼も食べてしまった俺は優勝候補から最も遠い存在だ。 部室の扉をノックすると俺(朝比奈さん)の声がした。 中に入ると俺(朝比奈さん)が朝比奈さんの定点、お茶汲みポジションに座っていた。 見ると破産宣告を受けた債務者のように暗い表情をしている。 「キョンくん……ごめんね……」 俺(朝比奈さん)の表情がどんどん暗くなる。 「ごめんね、わ、わ、わたしがうまくできなくて……その、 キョンくんに迷惑をかけちゃって……」 最初から潤んでいた目はついには大きな水溜りとなって流れ落ちた。 「わたし……男の子になるのは向かないみたい…… クラスで変なあだ名がついちゃいました。 ……オカマって……うぅ……」 ああ、なんとなくわかっていたさ。 だが誰と誰が言ったのか後でたっぷり谷口に聞き出すとして、 今つらいのは朝比奈さんの方だ。 俺の替わりにトイレや風呂など、嫌でも男の体を意識しなければならない時間を強制されるのだ。 さっきの体育の時間だって6組に移動して男子の中で着替えるのは耐え難いものであっただろう。 男の体になったからといってそれをいじくって楽しむような趣味は朝比奈さんには絶対にないと言い切れる。 「もう私……ぐす、つらくて……ごめんなさい。 キョン君の体なのにこんなことを言って……本当に……ごめんなさい……ごめんなさい」 この人は感情を全て感情に出してくれる。 こんな人が未来の組織からの指示で、 俺の体を使って何かを企むことなんて出来るわけがない。 そんなことをしたらすぐにハルヒにバレるだろう。 肩を両手で支え、そっとハンカチを差し出す。 早く元に戻りたいね、と言いながら涙を拭う仕草は、 紛れもなく朝比奈さんのものであった。 俺(朝比奈さん)の姿に元の朝比奈さんの姿が投影して、とてもいとおしく見えた。 それからじっとこちらを見つめながら何かを言いたそうにしている。 口元がかすかに震えて潤んでいる。 これは我ながら可愛い……のかもしれない。 肩に置いた両手がずっと離したくない気持ちになる。 ドサッ 何かが扉の方で落ちる音がして2人の体がビクッと反応し、とっさに離れる。 いつのまにか扉は開いていた。 音もなく扉を開けてそこに立ち尽くしていたのは朝比奈さんに扮した長門でもなく、 長門に扮した古泉でもなく。 ああ……ハルヒであった。 「へぇ~~~~~」 ハルヒの左右の眉がピクピクと痙攣を起こしているのを見て、 中学のときにやったカエルの解剖の実験のときの、 あの太ももの筋肉の動きを思い出した。 ハルヒは怒っているのか驚いているのか笑っているのかよくわからない表情で立ち尽くしていた。 朝比奈さん(長門)の顔がハルヒの肩越しに覗いている。 ハルヒと一緒についてきていたのだろうか。 こちらを見ながら首を傾け、何か不思議そうな顔をしている。 今俺は何をしていた? そう、俺こと古泉は今俺(朝比奈さん)の肩を揉んでいただけだ。 お互い向き合ってだがな。 別にやましいことをしていたわけではないぞ。うん。 ……こんな言い訳では余計誤解を招く。 何も言わない方がまだ被害は少なくて済む。 俺(朝比奈さん)は血の気の引いた顔で震えていた。 さっきまで泣いていたので目も赤く充血している。 俺(朝比奈さん)の方に向かってそれとなくアイコンタクトを送るが、 それをどう受け取ったか、戸惑いながら「ち、違うんです……」と言った。 ハルヒの方へそっと目をやるとさっき落とした自分の鞄を拾いながら、 汚いものを見るような目でこちらを見ている。 「へぇ~~~~~~~~」 2へぇをもらった。さきほどから送っているアイコンタクトはむしろ逆効果か? 「なんか昨日からキョンの様子がおかしいとは思っていたのよねえ」 俺(朝比奈さん)の体がビクッと反応する。 ハルヒは昨日から俺(朝比奈さん)の様子がおかしいって気づいていたのか。 そりゃそうだわな。 気づくに決まってる。 朝比奈さんは絶対映画女優には向かない。 見た目は大変よろしいがこの人を女優にしようという監督などまずいまい。 せいぜいハルヒが監督する映画くらいだろう。 いつかハルヒが映画を作るなどとふざけたことを言い出さなければいいのだが。 「こういうことだったのね」 どういうことだ。 変な納得をしないでほしい。 俺は朝比奈さんが心配なだけだ。 古泉だったらもっとうまい言い訳を考えられるんだろうが、 その点、俺はまだ古泉になりきれていない。 「ま、いいわ」 よくない。非常によくない。 「恋愛は自由よ」 性の垣根を飛び越えるような自由はいらない。 ハルヒはわざとらしく俺たち2人を軽く避けるような仕草をしながら 団長机に歩いていき、足を投げ出して座った。 デスクトップパソコンに電源を入れてからもずっと不機嫌な顔をしている。 「こ、古泉くん。古泉くん」 俺(朝比奈さん)が服の袖を必死に引っ張っている。 今くっつかれるとまた怪しまれると思いつつも振り向くと、視線の先に淡い肌色が映った。 朝比奈さん(長門)が制服を脱いでいた。 もう下着に手を書ける寸前であった。 あわてて2人で廊下に出る。 朝比奈さん(長門)も一言くらい言ってから着替えろって。 そもそもなんで朝比奈さん(長門)がいきなり着替え始めてるんだ? これから5時に駅前の大食い大会に出るというのにわざわざ着替える意味がわからない。 扉の前で待機していると、廊下の向こうから長門(古泉)が歩いてきていた。 「今、朝比奈さんが(長門)着替え中だ。もちろんお前でも中に入っちゃダメだぞ」 無表情でコクンと小さくうなずく。 無言のまま昨日と同じホテルの鍵を古泉(俺)に手渡す。 こいつ、だんだん長門の真似がうまくなっている。 「12時30分、閉鎖空間発生。本日二回目」 廊下の壁に背をつけてまっすぐ遠くを見ながら長門(古泉)がつぶやいた。 「ついさっきおわった」 恐ろしいことをさらっと言ってのける。 「今までで最大級」 真剣な瞳がこちらを貫く。 今ハルヒの身に何かが起きているのは間違いないらしい。 それは俺たちの態度の変化に対してなのだろうか? それとも他に要因があってのことなんだろうか。 変な様子がなかったか俺(朝比奈さん)に聞いてみる。 「う~ん……変な様子といえば涼宮さん今日はずっと不機嫌でしたねぇ。 あと……あ、そうだ。今日私、お昼食べてないんですよ」 はい? 意味が今ひとつ掴めず、目が点になる。 「あ、あ、違うんですよ。 お昼休みに涼宮さんに大食い大会に出るんだから食べるなって言われまして…… それでずっとお昼は涼宮さんに連れられて校内不思議探索をしていました。 探索中もずっと不機嫌でその途中でもあの空間を発生させていたわけです……」 なるほどね。ハルヒ監修の元、お昼を堂々と取るのは難しかったかもしれない。 「でも、不思議なんですよねえ。 涼宮さんもお昼取らなくて良かったんですかね? 今日は涼宮さん大食い大会に出るつもりないみたいなこと言ってませんでしたっけ」 そういえばそうだ。 ハルヒは昨日大食い大会に4人は登録したが、 自分は監督だから出ないと言っていた。 もしかしたら俺達が昼メシを抜くのに自分だけ食べるわけにはいかないという、 ハルヒなりの優しさとでもいうべきなのだろうか? すまんが古泉(俺)は昼飯は食べてしまっている。 あるいは急に気が変わってハルヒ自身も参加するつもりなのかもしれないな。 あの大食い王だ。 自分で優勝をかっさらいたい欲求が出てきて不思議はない。 「もーいーわよ」 中からハルヒの投げやりな声が聞こえて部屋に入る。 朝比奈さん(長門)がピシッとメイド服を決めてお茶を入れるためのお湯を沸かしていた。 少し、いつもの朝比奈さんっぽい仕草に見て取れる。 「もう少ししたら行くからね」 時計をちらりと見ながらハルヒがぶっきらぼうにつぶやく。 お前は今何を考えているんだ? そんなに気に入らないことがあるならみんなにぶつけてくれた方がまだマシだ。 重い空気の部室でハルヒの方を見ないようにしながら朝比奈さん(長門)の入れてくれるお茶を待った。 「お、とっとっと……」 突然お盆を持った朝比奈さん(長門)がゆっくりと棒読みのようなセリフを吐いた。 お茶の載ったお盆を左右に振り子のように振りながら、 スローモーションのようにこちらに倒れ掛かってきた。 ガッシャーン!バシャ! 熱熱熱あつあつあつーっ! 豪快にお盆の上のお茶がこぼれ机の上に散らばった。 熱気を帯びた湯気が一瞬部屋を白く覆った。 異変を感じ、とっさによけたが足に少し掛かってしまった。物凄く熱い。 上靴を脱いで足にふーふーと息をかける。 あわてて俺(朝比奈さん)が雑巾を持ってきて床を拭いた。 「ドジだから……」 朝比奈さん(長門)が割れた茶碗を拾いながらポツリとつぶやく。 えええ?まさか……まさか今のわざとか? 「あーっはっはっは、みくるちゃんサイコー! あはは、あはは、いい!いいわ!そうよ、みくるちゃん。 やればできるじゃなーい! それこそメイドでドジっ娘! 萌えの最強な組み合わせパターンよ! これであなたは無敵の萌え娘に一歩前進よ~!」 そう叫ぶとハルヒは机のどこからか腕章を取り出しマジックで「メイド長」と書きなぐった。 「喜びなさい! 今日からみくるちゃんはメイド長に昇進よ! そうだ!もう今日はどうせだからその格好で大食い大会に出場よ! いいわね?」 朝比奈さん(長門)が腕章を受け取りながらこくりと首を縦に振った。 俺(朝比奈さん)が露骨に嫌な顔をし、がっくりとうなだれる。 だがおかげで男2人の怪しい空気を吹き飛ばしてくれたのだ。 朝比奈さん(長門)が機転を利かせてくれたのかもしれない。 長い坂を下る。 いつもなら帰り道だが、これから俺たちは大食いの大会に出なければならないらしい。 開催場所の北口駅はここから歩くと結構な距離がある。 ハルヒは先頭を軽快に歩きながらドン・キホーテのテーマを歌っている。 その後を右腕にメイド長と書かれた腕章をつけたメイドがシャキシャキと歩き、 高校生3人が後に続く。 俺(朝比奈さん)の足取りが少し重い。足元がちょっとふらふらしている。 「ちょっと貧血気味で……大丈夫です。なんとか歩けますから……私をあまり心配しないで……」 体を支えようとしたところで前のハルヒが振り向いて不機嫌そうな顔でこっちを見ていた。 あわてて離れる古泉(俺) 俺は何をやってるんだほんとに。 俺(朝比奈さん)の話だとハルヒも昼飯を食べていないはず。 ならちっとは元気を落とせ。まったく。 「本当に……私なら大丈夫ですから心配なさらずに」 にっこりと俺(朝比奈さん)が微笑む。 この俺(朝比奈さん)はあまりしゃべらないほうがいいかもしれない。 ちっとも俺らしくする素振りなんてない。 これじゃあオカマといわれても仕方ないか…… でもそれだけ本当の朝比奈さんは女らしさに満ち溢れているということなのだ。 体が男になろうとも女らしさを失わない。 ハルヒも一度朝比奈さんに乗り移ってもらえ。 一日で今までの評価を一変できるぞ。 駅前広場についた。 大会種目はカレーライスのようだ。 昨日チラシをよく見てなかったからよく覚えてはいないが、 北口駅前の広場には異常なまでのカレー臭が漂い、カレーの街と化していた。 夕飯の支度帰りの主婦や、会社帰りのサラリーマンなどが野次馬になってごった返している。 この様子だと北高の生徒もかなり見ていることだろう。 隣にいる俺(朝比奈さん)の顔がまた暗くなっていく。 大会受付本部には大きなテントが張られ。 カレーライスの大食い大会を知らせるでっかい垂れ幕が堂々と掲げられている。 TV局も来ているらしく、 意外に大きい大会らしい。 TVカメラマンがメイド姿の朝比奈さん(長門)を見つけてカメラを回していた。 ニュースの時間にでも流すのだろうか。 この映像が使われないことを祈る。 ハルヒが受付からゼッケンを4つ持ってきた。 「じゃ、頑張るのよ! SOS団のメンツにかけても絶対に優勝すること! いいわね!」 それだけ言い切ると手刀を切るような仕草をして、 観客席の見やすいほうへとずかずかと人を掻き分けていった。 本当にハルヒはこの大会に出ないらしい。 出れば優勝候補になれると思うんだが。 控え室となるテントの中へ移動する。 みれば相撲取りのように太っている選手もいれば、 ガリガリにやせている選手もいる。 全部で20人くらいいるだろうか。 優勝しても商品券程度の物しかもらえないというのに良くやることだと関心する。 大会開始10分前になった。 舞台のテーブルに一列に並び、観客の視線を大量に浴びる。 かなり恥ずかしい状態だ。 司会者が一人一人名前を読み上げていく。 前回の優勝者が先ほどのガリガリ君だというから意外だ。 俺たちの登録名はSOS団団員1号、2号、3号、4号であった。 ハルヒのネーミングセンスの男らしさにはいつものことながら頭が下がる。 朝比奈さん(長門)がSOS団団員3号として紹介されると、 会場からへぇーとかほぉーといったため息交じりの歓声が沸き上がった。 やはりメイド服の美少女はかなり目立っているようだ。 その歓声を聞いて団員1号の俺(朝比奈さん)が顔を真っ赤にしてうつむいている。 ちなみに古泉(俺)の名前は4号。 数字は入部した順番である。 机の前に大皿に盛られたカレーが並べられていく。 ルールは20分で何杯のカレーライスが食べられるかという単純なもの。 一杯500gと言っていたので結構な大皿だ。 食べる前からお腹イッパイだな。 ま、こういう大会に一生に一度くらい出るのもいいだろう。 開始の合図を待ちながら俺の心はもうすでにギブアップしていた。 そのとき団員2号の長門(古泉)が素早くポツリとつぶやく。 「……閉鎖空間発生」 ………。 なんだって? 横を振り向くと俺(朝比奈さん)は左耳を手で押さえ、 朝比奈さん(長門)は右手にスプーンを握り締めたまま虚空をじっと見つめている。 いつかみた光景そのままである。 この真剣な顔つきはカレーの大食いにかける意気込みとは違うようだ。 いつぞやの野球大会みたいに優勝しないと世界が大変なことになるとかそんなんじゃないだろうな? 「わからない。前回と違い、始まる前から発生している。 この大会との因果関係が不明。とにかく急速に拡大中」 おい長門(古泉)、お前本当に中身が古泉か? 一人だけ元に戻っているようなしゃべり口だ。 すぐにでも長門(古泉)に駆けつけてもらいたいところだが、 これから大会が始まろうとしている段階で抜け出すわけにはいかない。 「こらー! キョーン! 絶対優勝するんだからねー!! みくるちゃーん! 頑張ってテレビにガンガン映るのよー!!」 観客席の一番前に陣取ったハルヒが大声で叫んでいる。 こうして見る限り、ハルヒは非常に元気である。 それにこれからみんなの試合が始まるというのだ。 こいつが本当に今閉鎖空間を広げているのか? とてもそうは見えない。 本当はハルヒと違う人物が閉鎖空間をつくっているんじゃないのか? そう思えてきた。 長門の魔法のような力を使えば簡単に優勝できるかもしれない。 しかし、テレビも回っている大勢の観衆下の元でそれを使うのは余りにも危険である。 出来る限り実力でケリをつけるべきである。 今この4人の中で一番この競技に向いているのはSOS団1号の長門(古泉)であろう。 得意のカレーライスとなればかなりのものだ。 物理的な胃の容量が違うとしか思えない。 ただ、心配なのはこの長門はいつもの長門と違って、 中身が古泉だということだ。 これがどのように影響するかはわからない。 とにかく長門(古泉)! 頼んだ! お前の食いっぷりに任せた! さっさと優勝して光る巨人を倒しに行ってくれ! 運命の開始のブザーが鳴った。 15分が経過。 自分の胃の領地は全てカレー色に占領されていた。 2皿食った。もうお腹一杯だ。 朝比奈さん(長門)は4皿の目の中ほどまで食べたところで、 スプーンに乗せたカレーを凝視している。 長門にとって大好きなカレーもさすがに朝比奈さんの体には応えたか。 「こら、バカキョーン!! 休んでる場合じゃないでしょー! カレーなんて口の中に全部詰込んじゃえばいいのよ! 食べるんじゃなくて全部飲み込む感じよ! こうやって、があぁーって! ああ!んもう! みんなしっかりしろー!」 ハルヒは見てるだけのクセになかなか無茶ばかり言ってくれる。 俺(朝比奈さん)はなんとか2皿完食していたが、 3皿目には手もつけず、グッタリとしていた。 もうみんな限界が近い。 それでも長門(古泉)は頑張っていた。 自分の背負った使命の重さは地球の重さである。 その顔には必死さと真剣さが伝わってくる この大食い大会の結果次第では世界の破滅もありえるのだ。 ガ・ン・バ・レ・長・門(古泉)! その一口には人類の明日が掛かっている! コップの水を口に含みながら隣の席の朝比奈さん(長門)がため息混じりにつぶやいた。 「閉鎖空間の拡大が加速している」 なんだって?これでもダメなのか? 長門(古泉)の前には空の皿が7枚積み上げられている。 たしかにこれは女子高生としてはすごいのかもしれない。 だが、前回優勝者の意地か、ガリガリ君の食べる速度はそれ以上のものがあった。 すでに10枚。もうすぐ11枚目のお皿が積まれるところだ。 長門(古泉)は負けているなりにも立派に健闘している。 これに勝たないとハルヒのイライラは収まらないのか? ハルヒの方を見ると爪を噛みながら恨めしそうな顔でこちらを睨んでいる。 さきほどとは違ってまるで鬼気迫る表情だ。 なんとなく閉鎖空間の拡大もうなずけるような気がする。 今勝つための最低ボーダー、カレー12皿は女性の一日辺りの消費カロリーの3倍に達している。 ここまでやらせると危険である。 長門(古泉)の手が急に止まった。 額にはすさまじい量の汗が溜まり、目は充血していた。 いかにも苦しそうな表情を浮かべた長門(古泉)は口パクで「無理」と言っているようであった。 こうなったら仕方ない。 頼む。なるべくばれない方法を使ってくれよ…… 朝比奈さん(長門)の口元が素早く何かをつぶやいたかのように見えた。 一瞬動きが止まったかに思えたが、 そこからいきなりスプーンの回転速度が加速した。 4皿目を一気に流し込んだ朝比奈さん(長門)は 5皿目から皿を持ち上げてそのまま一気にサラサラと口の中へ放り込んだ。 食べているというよりもほとんどどこか異空間へ捨てている感じである。 現にお腹が膨れていく様子もない。 よく見ると朝比奈さん(長門)の喉が全く動いていない。 だがそこはうまく皿を持ち上げることで周りから見えないようにカバーしている。 会場は壮絶な盛り上がりを見せた。 メイド服を着た上品で可愛い女の子がすさまじい食いっぷりを披露しているからだ。 朝比奈さん(長門)のその姿はメイドとしてはあまり上品な食べ方とは言えないだろうが、 この際贅沢は言っていられない。 こうなると次の皿にカレーを盛るのが間に合わないくらいである。 司会者が残り一分を告げたところで、 朝比奈さん(長門)があっという間に20皿目のカレーを異空間に流し込み それを見たガリガリ君はついに諦めたか、手を止めた。 会場はの歓声はヒートし、大盛り上がりを見せた。 市内大食い選手権大会の歴史にSOS団団員3号朝比奈みくるの名が刻まれた。 「表彰状、SOS団団員3号朝比奈みくるどの。 あなたは第6回市内大食い選手権大会において……」 表彰式の最中、すでに長門(古泉)の姿はなかった。 あの満腹の体で閉鎖空間の巨人とどこまでやれるのか知らないが、 朝比奈さん(長門)の優勝により、 幾分か閉鎖空間の拡大は抑えられているということだったのでたぶん大丈夫だろう。 この優勝は無駄ではなかったと思いたい。 ハルヒには長門は急用で帰ったと伝えておくか。 それにしても朝比奈さん(長門)の食いっぷりは見事という他なかった。 見事すぎて逆に怪しまれないか不安である。 実際、前に野球大会でインチキを使ったときも相手チームにはかなり怪しまれたものだが、 今回も周りの選手たちからは疑いの目としか思えない視線が注がれていた。 これ以上SOS団という名前でこのように目立つことをするのは大変危険である。 しかし、ハルヒにはそんなことはどうでもよかったらしく、 「やったわ!みくるちゃん!優勝賞品の商品券でみくるちゃんの新しい衣装を買ってあげるからね! そうだ!今度は女王様なんてどう?結構高いのよ、ああいう服は。」 と朝比奈さんにとっては何ともありがたくないであろう公約を掲げていた。 ハルヒは朝比奈さん(長門)の手から商品券を当たり前のように奪い去りながら自分の鞄の中に入れていた。 その横で俺(朝比奈さん)がぐったりとしながら、自分にはさも関係のない話のようにしている。 俺ももうしばらくカレーは食いたくない。 大会を終えた4人はすることもないのでそのまま帰宅の途についた。 辺りはすっかり暗くなっている。 「ねえ、キョン」 なんだよ、と返事をしそうになった。 そうだ。俺は今、古泉である。 キョンと呼ばれたら俺(朝比奈さん)が返事をする役目である。 道路のカーブにある反射鏡を見上げるとしっかりとそこに反射鏡を見上げる古泉(俺)の姿がある。 俺(朝比奈さん)は呼びかけに何も答えず、考え事をしていたのか黙々と足を進めていた。 「こら、バカキョン!」 「いたたたっ! は、は、はい! なんでしょう?」 左上腕部をぎゅっとつねられて初めてハルヒの呼びかけに気づいた俺(朝比奈さん)はあわてて振りむく。 「んもう、さっきから何ぼーっとしてんの? どーせみくるちゃんのことずっと見てたんでしょうけど。 ……言っとくけど、みくるちゃんはあたしの物だからね! 変な気起こさないでちょうだいね」 ハルヒは朝比奈さん(長門)に後ろから抱きつくと、 まるで自分のおもちゃを自慢する子供のような顔で朝比奈さん(長門)を軽々と持ち上げた。 持ち上げられた朝比奈さん(長門)は無抵抗なまま ハルヒの右腕の上で一回転したところで放り出されるようにして着地した。 俺(朝比奈さん)はなにか言いたげな顔をしていたが、 今ハルヒの力で俺たちが入れ替えられているのであれば、 やはり俺たちはみんなハルヒの物といっても過言ではないのかもしれない。 ……いや、そんなことはさせないぞ! させたくないが…自分の体が自分の物でないこんな状態ではあまり説得力もない。 「あたしん家こっちだから、じゃあね」 とハルヒは一言だけ言い切ると、そのまますぐに十字路を左に曲がり暗闇に颯爽と消えていった。 ハルヒは本当に元気なままだ。 何か不機嫌な要素を残しているとは思えない。 そのことが余計こちらを不安にさせる。 俺(朝比奈さん)とも次の角でわかれ、 そこからしばらくは朝比奈さん(長門)と二人きりとなった。 朝比奈さん(長門)はいつものとおりの長門らしくずっと無言のままだ。 途中すれ違う人たちが朝比奈さん(長門)のメイド服姿に驚いていたが そんなことはまるで目に入っていないようだ。 光陽園駅が見えてきたところで朝比奈さん(長門)は急にまま立ち止まった。 朝比奈さん(長門)の右腕についたメイド長の腕章が風にゆれ動く中、 体は1ミリも動かさず顔だけをゆっくりこちらへ向けてきた。 長門がこんな風な行動を取るときは必ず何か重要な意味がある。 あるのだが、その行動は少し遅い。 早く言えって。 「……わたしの家に来て」 突然心臓の音がドクンからドキンに変わったような気がする。 いつか本物の朝比奈さんにこんなことを言われる日が来てほしいものだ。 「なんで?ここでは話せないこと?」 「話したいことがあるの」 朝比奈さん(長門)の目は真剣そのものであった。 長門のマンションは昨日来たばかりだ。 あのときはだいぶ混乱していたな。俺も。 二日たって落ち着きは取り戻したが、肉体は取り戻せないままだ。 エレベーターに乗って7階を押す。 「何か食べたいものある?」 朝比奈さん(長門)が珍しく人の注文を受けようとしている。 「…冷凍庫にカレーしかないけど」 思わず驚いてしまった。 そして少し笑ってしまった。 長門、お前いつの間にか冗談がうまくなったなぁ。 部屋の電気をつけてコタツ机に座っていると、 朝比奈さん(長門)が台所から盆に急須と湯飲みを載せて持ってきた。 いつか最初にこの家に来たときと同じ状況なのだが、今ここにいるのは朝比奈さんと古泉だ。 周りから見たら全然違う風景である。 さきほどのようにドジッ娘発動でお茶をこぼさないうちに空中で茶碗を受け取った。 「話ってなにかな?」 こちらから切り出してもすぐに話し出さないのが長門の癖だ。 俺もとりあえず飲めといわんばかりに出されたお茶に口をつけて押し黙った。 朝比奈さんの入れたお茶と少し味が違う気がする。 だがこれはこれでおいしいと思えるから不思議だ。 朝比奈さんの体からはお茶をおいしくさせる成分が抽出されているのだろうか。 ふと、昨日長門(古泉)が言っていたことが気になった。 「ところでお前、朝比奈さんの体になってから、ハルヒに対する観測の視点とやらに変化はあったのか?」 昨日の長門(古泉)からの電話のときの話題だ。 長門はもしかしたら今回の事件を意図的に起こした張本人かもしれないというものだ。 今日のハルヒの様子を見ていると、もしかしたらこの長門という線も考えられなくはない。 人間を入れ替えるなんてことが出来るのはあとは長門くらいのものだからな。 朝比奈さん(長門)はうつむいたまま何も答えない。 何か心の中で葛藤しているのか。そしてようやく口にしたことばは… 「もしかしたら私たちは……元の体には戻れないかもしれない。」 な、なんだって? 「私を含め団員の4人は恒久的にこの体のまますごすことになる可能性がある」 衝撃的かつ無責任な発言だ。 古泉が言っていた最悪な予感の一つを自ら宣言したのである。 そのくせ俺の質問には何も答えていない。 …待ってくれ長門。昨日と話が違うぞ。 お前が俺たちの体を元に戻せないとなったら俺たちはどうすればいいんだ? またハルヒのきまぐれで俺たちの体をシャッフルする日を待てというのか? それともそうさせるように仕向けろというのか? しかもハルヒには入れ替え事件を知らせずにだぞ? 話は長くなる、といったん前置きをおいた後お茶を静かにすすって答えた。 「今回の騒動の発端は涼宮ハルヒ。 彼女による小規模時空変換の際に、私の中にある変化がもたらされた。 それは人間が有機生命体である以上、体内細胞に微小ながら蓄積される思考情報の残骸。 …あなた達の言葉で言うところの残留思念ともいうべきものを解析したときに起こった」 残留思念などという言葉を使ったことなどないが、 とにかく体に残った記憶のようなものだろう。 そんなものがあるなんて気づかなかった。 じゃあ、この古泉の体にも残留思念があるというのだろうか。 しかしながら俺は今、古泉の使う超能力もなければ意識も記憶も何も持っていない。 「人間にはどのようなデバイスを用いてもこの残留データから情報を汲み取ることは出来ない。 このことは未来人である朝比奈みくるも同じこと。つまり私だけにできる…」 と言って朝比奈さん(長門)が急に隣に体を寄せてきた。 ドキっとして思わず体を反らそうとしたが朝比奈さん(長門)密着してくる。 そして右手の人差し指をゆっくりと古泉(俺)の額に伸ばし、軽く触れた。 いや、触れたのだろうか。触ると同時に感覚がなくなったのでわからなかった。 目の前が突然真っ暗になったのである。 いや、急に暗いところに来た時のフラッシュバックともいえる状態だろうか。 徐々にボンヤリと周りの状況が確認できる。 ぼんやりと明るい灰色の空、無音の空間、誰もいないビル群。 …閉鎖空間である。 だが不思議なことに今回の閉鎖空間は今までと感覚を全く別にしていた。 言葉では説明できない何かをたしかにそこに感じていた。 誰かがここにいる。わかる。 そして戦っている。あの光の巨人とだ。 そしてこの空間を生み出した主の存在をはっきりと感じる。 ──ハルヒ。 急にまたフラッシュバックした。今度は眩しい。 気づくとまた長門の部屋にいた。 朝比奈さん(長門)の指がゆっくりと目の前から離れていく。 今の映像が古泉の体にあった残留思念なのだろうか。 やけに生々しい。今起こっている出来事のようであった。 「朝比奈みくるの情報を解析しているうちに、意識下における情報の中で、 今回の騒動の原因の因子とみえる意識の片鱗を捕らえた」 つまり、朝比奈さんに原因の一部があるってことか? もしかしてそれを言うために俺をここへ呼んだのか? 「朝比奈みくるは自己の言動により涼宮ハルヒへ大きな影響を与えたことを無意識の元に自認している。 そのことが今回の入れ替え騒動を引き起こした原因になったかもしれないということも。 しかしそれは…朝比奈みくるとして、言ってはいけないことが含まれている。」 なんだそれは。 知っているけど教えてくれないというのだろうか。 朝比奈さん特有の禁則事項とでもいうのか? 朝比奈さん(長門)は押し黙ったままうつむいている。 「……以前の私なら言えたこと。 私は…朝比奈みくるの残留思念のもたらすエラーにこれ以上対処できない」 どうしても教えてもらえないのか? 「わからない。このことがなぜか朝比奈みくるにとっての意識の中で特別なカテゴリーを持ち、 その情報は身体における理解の分別の中にいくつかの情報とともにタブーを伴って存在している」 タブー…それは未来人としての特性なのだろうか。 とにかく長門の使う言葉がわかりにくく、理解が全てに及ばない。 こういうのをなんていうんだっけ? 長門は情報の伝達に齟齬が発生するって言ってたな。 「私は現在、情報統合思念体と直接同期できない。 このことが個としての私本体の能力に限界をもたらすと同時に、 朝比奈みくるから受ける情報同期への回避行動を不可避なものへとさせている。 そして、朝比奈みくるによってもたらされた蓄積情報が、 排除できないデブリとなって私に大きなエラー情報を与えている。 いつか私にもたらされるかもしれない大きなバグが情報回路に形成されつつある。 それが発動したときの行動を予測できない。 きっとあなた達を元に戻すことは出来ないだろう」 長門は普段は全くの無言だが、しゃべるとなると一気にしゃべる癖がある。 お茶はすっかり冷たくなってしまっている。 頭の中もすっかり冷めてしまった。 長門にとって朝比奈さんの体でいることはいろいろと不都合があるらしい。 だからハルヒの能力による規制が外れても、 そのまま能力が落ちたままになる可能性があるということだろう。 ざっとこんな感じの意味だったと理解した。 これ以上は今の俺にはついていけない。 「ところで、長門の今の状態が徐々に変化していくものとして…、 9月12日になった時点で俺たちの体を元に戻すことのできる可能性はどのくらいあるんだ?」 「おおよそ…99.9996%」 ほぼ確実に大丈夫じゃないか。 たったの0.0004%がそんなに長門を不安にさせる材料となっているのか。 いや、長門のことだ。 この極少の確率がいずれ大きな可能になることを知っているのかもしれない。 だから俺にそのことを警告しているのだ。 そのときが来たら助けてくれと言いたいのかもしれない。 部屋から出たときに初めて気づいた。 俺は今まで、朝比奈さんと二人きりで一緒の空間にいたのだということを。 中身は長門にしろ、体はあの犯罪的なボディーである。 むしろ中身が長門であるからこそ間違いが起きても朝比奈さんにはわからないということで… いや、間違いはないんだが、もちろんする気はないんだが、何言ってるんだ俺は。 せっかくの貴重な時間を何もせずにただ話を聞いているだけに終わってしまった自分を情けなく思った。 さっさと帰ろう。っと今日も泊まりはホテルだ。我が家が恋しい。 古泉が用意してくれたホテルは昨日と同じ、 部屋の番号だけが違う部屋であった。 部屋の配置などに変化もない、つまらないビジネスホテルの一室。 シャワーを浴びて横になると同時に携帯が鳴った。 長門(古泉)からだ。 「やあ、すいません。もう寝ていましたか?まだ大丈夫でしたらお伝えしたことがありまして」 すっかり口調は古泉だ。 昼間の長門(古泉)とは別人のような語り口である。 「いえいえ、あれは長門さんのフリですから。 うまくなったものでしょう?僕も俳優やらせたらなかなかの物になるんじゃないですかね?」 「疲れてるんだから用件だけ言え」 「ああ、すいません。もちろん他でもない涼宮さんの話なんですが」 長門の次は今度はハルヒか。 SOS団は問題ばかり発生する団ともいえるな。まさにSOSだ。 「閉鎖空間の発生が頻発しています。 あなたと別れた後もあれから二回も閉鎖空間が発生しました」 やっぱり原因はハルヒなんだろうか。 古泉がそう感じるだけで他の人が作り出した閉鎖空間ってことはないのだろうか。 さっき朝比奈さん(長門)は自分の力が制御できないと言った。 さらに朝比奈さん自身に原因の発端があるとも言った。 「いいえ、それはありません。 間違いなくこの閉鎖空間を発生させたのは涼宮さんです わかってしまうのだから仕方がないのです。」 そう、それはさっき古泉の体とシンクロしたときなんとなく感じていた。 あの一瞬で今ハルヒの心の中に抱えている意識下ストレスの大きさがわかったのだ。 だから古泉の言いたいことはよくわかる。 「今までの涼宮さんの場合、閉鎖空間を広げるときは何か物事がうまくいっていないときでした。 そういうときの涼宮さんの様子であれば、顔色や態度からなんとなく読み取れるはずでした。 ですが今回は違いました。 あなたも目の前で見ていたでしょうが、 涼宮さんの提案した大食い大会に優勝しているにも関わらず、ストレスは増大していったのです もちろん閉鎖空間の規模もどんどん大きくなっています。 今まではあなたの力でかなり涼宮さんのストレスを抑えることが出来ていました。 少なくともイライラの原因を推し量ったり、 涼宮さんの行動をコントロールしたりはできましたからね。 ですが、今僕たちは自分の体を離れ、各々の行動を制御できません。 あの朝比奈さんではあなたの肉体を使って涼宮さんのストレスをとめることは出来ないのです」 俺はもうハルヒの相方として離れることができない存在だとでも言いたいのだろうか。 俺はアンコウの雄と雌じゃない。 あいつの伴侶としていきるつもりは毛頭ない。 だが、このまま灰色の世界に飲み込まれて消えるのはもっと嫌だ。 「このまま行くと明後日くらいが持ちこたえられる限界です。 長門さんの力で元に戻してもらうにしても 少なくとも9月12日まではこのままでいなくてはなりません。 もしかしたら……」 もしかしたら? 「もしかしたら9月12日という日は人類滅亡の期限なのかもしれませんよ」 人類の滅亡だと? そういうことを軽々しく口にする古泉の癖にはもううんざりする。 早く電話を切ってくれ。 「この調子では明日は学校に行けないかもしれません。 そのときは涼宮さんを頼みます。 とにかく涼宮さんのストレスの原因を探ってください。お願いします。では」 頼まれてもどうしようもない。 さっき古泉がいったように俺は今古泉になっているせいでハルヒに対して影響力が少なくなっているからだ。 そしてその体を動かしている朝比奈さんは今回の原因について何も話してはくれてはいなかった。 朝比奈さんの体に乗り移っている長門もだ。 細かいことは明日直接聞くしかない。 まずはハルヒのストレスの原因を探ることから始めなくては… 携帯を机の上に置き、ぐったりと横になって時計を見ると時間は12時を差していた。 明日は9月10日。 何をするのか具体的にはつかめぬまま、とにかく明日にかけるしかない。 古泉になって二日目の夜が更けていった。 第3章
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2654.html
声のした方に顔を向ける。 「古泉か。……ここは?」 「病院です。冬の時と同じ部屋ですよ」 古泉の話を聞くと、どうやら前回と同じように、俺は倒れて病院に運ばれたということになっているようだ。 「今はいつだ?俺はどのくらい眠ってたんだ?」 「今が夕方ですから、ほぼ丸一日といったところですね」 「今日の部活は?」 「もちろん中止ですよ」 そう言って古泉は右手を大きく動かす。 『涼宮ハルヒの交流』 ―第六章― その先には俺の看病をしてくれて疲れているのか、眠っているハルヒの姿が見える。 「ちなみに涼宮さんは今日は学校にも来ていません」 じゃあハルヒはずっとここにいてくれたってことなのか? 「そういうことになりますね。かなり心配していたようですよ。ところで……」 古泉はほんの少しばかり真剣な顔つきになる。 「今回は一体何が起こったのでしょうか?」 ということは古泉は何もわかってないのか? 「昨日の昼間にかなり大きめの閉鎖空間が発生しましてね。あるいはそれが関係しているのかと」 ああ、やっぱ閉鎖空間はできてたか。 「その顔は、心当たりがおありで?」 「少しな。たぶん原因は俺のせいだ」 「と、言いますと?」 「ああ、昨日の昼にな……と、その前にこの一日に何が起こったかを話しておこうと思うんだが」 「構いません。どうぞ」 古泉はそう言って手で続きを促す。 「実はな、異世界に行ってたのさ」 ……………… ………… …… この一日について、一部省略しつつも大まかに全てを伝える。 「と、まぁこんな感じだ」 「そんなことが……」 古泉は予想以上に驚いているようだが、そんなに驚くことか? 「いえ、異世界人を呼ぶことが出来るとは思っていませんでしたから」 「そういえば向こうのお前も同じようなこと言ってたな。異世界に干渉するのは難しいとかなんとか そっちの世界にも神がいる可能性がいるから、ハルヒでもそう簡単にはいかないとか」 「ええ、そんなところです。ですから、この世界からあなたをどうすれば連れて行けるのかがわかりません。 例え向こうの涼宮さんがそう望んだとしても、おそらくこちらの涼宮さんが妨害すると思われますし」 そういえば言うの忘れてたな。 「向こうのハルヒの話だと、俺が異世界に行ったのは、向こうのハルヒの力じゃないらしいぜ」 「向こうの涼宮さんには力の自覚があるのですか!?そんな……」 「まぁでも特に問題はなさそうだったぜ。知ってるって言ってもなんとなく程度みたいだったし」 「そうですか……。それは非常に興味深いことですね。 だからといってこちらの涼宮さんに力の事を教えても問題ないと考えるのは早計ですけど」 確かに。向こうのハルヒとこっちのハルヒにはかなり違いがあるようだったしな。 「それにしても、ではどうしてあなたは向こうの世界に行ったのでしょうね。 やはり昼間の閉鎖空間が関係して……!なるほど、そういうことですか」 わかったのか?なるほどって言われても全くわからんぞ。 「昨日の昼に何が起こったか教えていただけますか?」 正直言うとあんまり話したくないことなんだが、言わないと話が進まないよな。 「昨日の昼休みに弁当を食べた後、いつものように谷口、国木田と話をしていたわけだ。 で、これもいつものことだが、谷口が彼女がどうとか話始めたときにハルヒが帰ってきた。 まぁその時は別にどうともなかったんだが、時間が経って二人が去った後にハルヒが聞いてきたんだ。 『あんたも彼女欲しいの』って。俺は欲しくないことはない、みたいな感じで返したと思うが」 「なるほど、やはりそういう話ですか」 やはりって何だ?やはりって。気にくわんな。 「で、俺もハルヒにお前こそどうなんだ、って聞いたらいつもどおり『普通の人間には興味ないのよ』ってさ。 そのハルヒの様子が気に入らなかったのかなんでだかは知らないが、つい熱くなっちまって、 普通じゃない人間なんか見つかりっこないんだから、普通の人間で満足するしかないんだよ、って、 ちょっとばかり声を荒げちまったのさ。そうしたら『うっさい、だまれ!』って怒鳴られた。 たぶんかなり怒ってるんだろうが、それ以降は全く口をきいてくれなかった」 古泉はクックッ、と変な笑い方をして言う。 その笑い方はやめろ。気色が悪い。 「それはあなたが悪いですね」 「そうだな。そんなムキになるところじゃないよな」「いえいえ、違いますよ。あなたが素直じゃないのがいけないのですよ」 そう言ってまた笑う。 何を言ってるんだこいつは?全くわからんぞ。 「まぁそれでも結構ですよ。とりあえず何が起こったかについてはおおよそ見当がつきました」 まじでか?じゃあ、どうして俺は異世界に? 「結論から言いますと、あなたはこちらの涼宮さんによって異世界に飛ばされたのですよ」 飛ばされた?そんなことができるのか? 「異世界から連れてくるよりは、異世界に飛ばす方が簡単だということはなんとなくイメージできるかと」 まぁ確かにそう言われてみれば、ポンっと飛ばすだけならそう難しくはないような気はするな。 「ということは、ハルヒが怒って俺に愛想をつかしちまってことだな」 「いいえ、違います。むしろ逆です」 またこいつはおかしなことを言い出した。逆ならなんで飛ばされる必要があるんだ。 「では簡潔に聞きますが、あなたは涼宮さんのことが好きですね?」 「………」 「ふふっ、あなたの態度は口と違っていつ見ても素直ですね。で、涼宮さんもそれをある程度は感じています。 まぁ涼宮さんは恋愛感情などに疎い方ですから、確信があるというほどではないでしょうね」 「その話が何の関係があるんだ?」 俺の質問を聞いているのかいないのか、古泉は変わらない調子だ。 「先ほどあなたは涼宮さんが『普通の人間には興味ない』と言ったと言いましたが、それは嘘です。 彼女は普通の人間にも興味を持っています。いえ、持てるようになったというべきですか。あなたのおかげで。 ですが、彼女も頑固な人です。『普通の人間でもいい』と簡単には言えないのですよ。 つまり、彼女もその頑固さ、意地ですかね。それと感情のジレンマに悩まされているというわけです」 「話が全く見えてこないが、どちらにしろハルヒは俺にいなくなって欲しいと思ったんじゃないのか?」 「ですから、その全く逆です。彼女はあなたにずっと側にいて欲しいと願っています」 「ずっと側にいて欲しい人間を異世界に飛ばす人間の気持ちが俺には全く理解できないんだが?」 やれやれ、と言って古泉は大きく息をつく。 くそっ、なんかムカつくな。 「これは例え話ですが、涼宮さんがあなたのことを好きになってしまったとします。涼宮さんはその気持ちを伝えたい。 ですが、普通の人間であるあなたにたいしてそのような感情を抱くことは自分の主義に反することになる。 いえ、この場合は主義というよりも思想ですかね。それは涼宮さんのアイデンティティーとも言えます。 それを覆すということは、自分自身の否定に他ならない。だからこそその感情を認めるわけにはいかない。 ですが、そうは言ってもあなたには側にいて欲しい。それは事実です。ならばどうすればよいでしょうか」 知らん。どうにもならないんじゃないのか? 「いいえ、答えは簡単です。あなたを普通の人間じゃなくしてしまえばいいのですよ」 こいつはまたとんでもないことを言い出した。 「そんな無茶な。じゃあ俺に変な力が生まれたとか言うんじゃないだろうな?」 「いえ、おそらく涼宮さんはあなたに特殊な能力を持たせることは望んでいません。 なぜなら、涼宮さんが好きになったのはあくまで何の力も持たない普通の人間のあなたなのですから。 自分への言い訳のために、申し訳程度にあなたに特殊な属性を付加したにすぎません。 それが、異世界人という属性です」 「いや、異世界人と言っても俺はこの世界の人間だぜ?」 「ご心配なく。涼宮さんはあまり通常の設定をしないようなので。例えば僕の力もそうです。 涼宮さんは超能力者を望みましたが、僕の力は一般人が想像する超能力とはかけ離れています。 長門さんにしてもそうです。彼女も、UFOでやってくるようなごく一般的な宇宙人ではありません。 それに比べれば、あなたはまだ普通の異世界人とも言えると思いますが」 そう言われてみれば変だな。ハルヒは普通の超能力者すら嫌なのか?わけわからん。 長門に至っては本当にわけのわからん存在だしな。朝比奈さんにも何かあるのか? 「言うなれば、あなたは他所に行ってしまった転校生が、再び転校して戻ってきたようなものです。 まぁどちらにしろ転校生というわけですね」 古泉はわかりやすいのかわかりづらいのかよくわからん微妙な例えを出してきた。 「つまりハルヒは俺を異世界人にするためだけに、俺を異世界に飛ばしたって言うのか?」 「おそらくはそうです。その証拠にちゃんとここに呼び戻されているでしょう?」 行っていたのはたった一日だしな。確かに一試合でも投げれば肩書きは元メジャーリーガーになるもんな。 それにしても……、 「俺が異世界人になるってのはそこまで重要なことなのか?」 「そうですね。かなり重要かと」 そうは思えないんだがな。そんなにこだわることか? 古泉め、また笑ってやがる。くそっ。 「女性にとっては言い訳というものが非常に重要になります。 例えばデートに誘われたからといって、簡単に誘いにのると軽いと思われるのでは、という不安があります。 ですが、相手から何度も誘われることによってその気持ちは少し変わってきます。 『別に私が行きたいわけじゃないが、これだけ熱心なのだから付き合ってあげよう』と。これが言い訳です。 要するにそれと同じことです。『普通の人なら断るんだけど異世界人なら仕方ないよね』というわけです。 涼宮さんは言っていたのでしょう?『普通の人間じゃなければなんでもいい』と。ですから同じことです。 異世界人だからあなたと付き合ってあげる。別にあなたのことを好きになってしまったからではない。というわけです」 何かあまりよくわからんような微妙な話だが、 「まぁいい。とにかくお前の言うことが当たっているならば、俺が再び飛ばされることはないってわけだな?」 「おそらくは。もし何らかの他の意図がある場合にはわかりませんが」 そうか。ってことはこれで一件落着ってことだな。とりあえず安心だ。 「何をおっしゃるんですか。あなたにはまだ重要な仕事が残っているじゃないですか」 重要?仕事?何のことです? 「おや、とぼけるおつもりで?何のためにあなたは異世界まで行ったと思っているのですか?」 ……わかってるよ。 「……ちゃんとやるよ。そのつもりだ。それにその方がお前も助かるんだろ。」 「もちろんそうですが、どちらかというと僕は一人の友人として応援しているのですよ」 はいはい、ありがとよ。「まぁそういうことです。……涼宮さん!起きてください。彼が目を覚ましましたよ」 古泉はハルヒに呼びかけながら肩を揺する。 「……ん、古泉くん……?ってキョン起きたの!?あんたあたしがどれだけ心配したと思ってんのよ。 あ、いや、心配っていってもほら、だ、団長だから団員のこと心配するのは当たり前でしょ」 「……ああ、心配かけてすまん。ありがとよ」 「ま、ちゃんと目を覚ましたならいいわ。見た感じだいじょぶそうだし」 古泉がふと立ち上がりドアの方へ向かう。 「何かお二人に飲み物でも買ってきますね。……では、お願いします」 出ていく前に俺の方を向いて気持ちの悪い笑みを浮かべてきやがった。 そして、ここでハルヒと二人きりになった。 ◇◇◇◇◇ 最終章へ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/355.html
コンコン ど、どうぞー 何時もどおり部室にノックで確認をとって入る俺。 ヒュー紳士的ー、しかし今朝比奈さんの声、どこか上擦っていたような? 「うぃーすってみんなどうした?」 何時もと同じ面子だが、何時もとは様子が違う。 特にハルヒ以外のメンバー 「どうしたんだ?みんな?」 「いえ、別に何もありませんよ。」 と言った古泉の顔が笑いながら少し引きつっているように見える。 長門は相変わらず本を読んでるが席が窓側の近くから、廊下側の近くに移動されている。 朝比奈さんもここなしか、いや明らかに廊下側の近くの席に座っている。 そして皆の正反対の位置でハルヒがニヤニやしながらパソコンに向かっていた。 しかし朝比奈さんならまだしも、長門や古泉が観察対象から自ら離れるなど、なかなかないことだ、どんな近寄りがたい事をしてるんだ? 俺はハルヒが何をしているのか気になり、ハルヒ近ず。 何やら何かBGM的な音楽と女の声がパソコンから聞こえてくる。 オイMASAKA!? 俺は素早くハルヒの後ろに回りこむと、そこにはゲームの画面があった。 『えへへへ、キョンくーん。』 メッセージウインドウにはそう書いてあった。 さらに足元にゲームのパッケージが落ちていた、なになに? 東鳩2?意味わからん、だがパッケージのあるシールでこれがどういうものかが確定した。 さあ深呼吸だ★ 「エロゲーかぁぁぁぁ!!」 「そうよ。」 「うお!びっくりした突然振り向くな…。」 「突然叫んだヤツの台詞じゃないわよそれ。」 いやお前に問題がってそんなことはどうでも良い。 「でどこから仕入れてきた、こんなもん。」 「コンピ研ロッカー室から」「許可は?」 その時隣の部屋から。 『ああーマイユートピアはいずこに!!!?』 『お気を確に部長!』 『オレのこのみんが…オレのまーりゃんが…』 『諦めるな!まだ探して無いところがあるはずだ!』『エヘヘへもう生きてる意味すらわからない…』 『部長ー!部長ー!』 ………ご愁傷さまだが学校に持ってきてまでやるお前らにも問題あるぞ? そしてこいつにも大問題があるぞ、俺柄みでな! 「つーか俺の名前でプレイするなぁぁ畜生がぁ!!」 「だって、誰かに見つかった時にあんたのせいに出来るしー。」 SATUGAIしてー。 そんな沸き立つ感情を内に秘め、なんとかこの場を納める事に専念した。 「なあハルヒそれやるんならみんな帰していいだろ?俺は残るからさ。用事があるんだってさ。」 そういうとハルヒが皆の方を向く。 待っていましたと全員が逃れたくて、必死に首を縦にふる。 それを見たハルヒは、 「じゃあ良いわよ、今日は用事がある人はかいさ「「「おつかれさまでした!!」」」 「ハヤ」 ものすげー速かった。 おいおいこいつは世界を狙えますよ? 「さてハルヒ、部室に二人きりだな?」 ちょっとご機嫌に言ってやると 「そうね?じゃあどうするぅ?」 やけに挑発的だ。 「決まってるだろそんなの…。」 だんだんとハルヒの陰と俺の陰が一つに重なっていく。 「エロゲーじゃー!エロゲー祭りじゃー!!」 「うほほーい!この展開有り得ないけど胸が土器☆土器☆するぜぇ、なあハルヒ!」 俺たちは一つの画面に身を寄せてエロゲーを楽しんでいる、いつもはすれちがっていた二人が一つになれた。 俺らはこの一体感とエロゲーを満喫している、青春最高! 終わり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/533.html
いつからだったのだろう──── ────世界に色がついたのは いつからだったのだろう──── ────静寂に音楽が流れ始めたのは いつからだったのだろう──── ────いつも笑ってられるようになったのは いつからだったのだろう──── ────私の心にあいつが現れたのは ‐ 涼宮ハルヒの羨望 ‐ いつもと変わらぬ日常。 くだらない授業。 適当に聞いとけば満点の取れる内容なんて、ばかばかしくてイヤになる。 くだらない、ほんとにくだらない。 この生活が気に入っている人も居るんだろうケド、私にとってはただの苦痛。 なんで私はここにいるの? なんのために生きてるの? ふと、頭をよぎる当然の疑問。 誰しもが思い、誰しもが感じる、疑問。 ねぇ、なんで? 小さく、ほんとに小さく、誰にも聞こえないように呟いた。 そうすることで、何かが変わる気がしたから。 実際は─── ───言うまでもないケド。 退屈は私を覗き見る。 退屈は私を蝕む。 まるで、私は私自身が置き物のように感じる。 その気持ちに押しつぶされそうになる。 目頭が熱くなる。 私は、世界の部品じゃない。 耐え切れなくなって、前の席を叩く。 「……どーした?」 授業の邪魔にならないように、小さく呟くキョン。 めんどくさそうに、いかにもめんどくさそうにね。 キョン。 「何だ?」 ……なんだろう? 何のためにキョンを呼んだの、私。 こいつと話してると気がまぎれるの? そうなの、私? 「………ハルヒ?」 何よ 「いや、用はないのか?」 あるわけないじゃない。 ないから呼んだんじゃない。 ……あー、我ながら意味わかんないわね。 イライラするイライラするイライラする。 なんかない? 我ながら馬鹿馬鹿しい台詞。 「なんか、ってなんだ?」 なんかはなんかよ 「まず、何をしたいのか俺によくわかるように言ってくれ」 再び私を沈黙が覆う。 私、何がしたいの? …… 「ハルヒ?」 なんでもない。 「……おーい?」 もういい。 私がそう言うと、諦めたのか、前を見る。 そして会話中に黒板に書かれた文章をノートに書き写す。 なんでこいつはこんなに勉強しててあんなに頭悪いの? ばっかみたい。 長く連なる時の流れは私に退屈という名のナイフを突き刺していく。 その苦痛のせいで、寝ることもできない。 何か起こらないかな。 そんなどうでもいいことを望む。 ───あら? 何気なく校庭を眺めると古泉くんが歩いて校門へと向かっていた。 なんだろう、早退かな? 具合は悪そうに見えないから、何か用事でもあるのかな? 古泉くんの帰宅する理由を考えることで多少の気はまぎれた。 でもわかんないから今度聞いてみよう。 覚えてたら、だけどさ? ───キーンコーンカーンコーン やっと。 やっと終わった。 なんでこんなにかかるの。 時と交渉ができるのなら私の時間だけ早く進むようにして欲しい。 あ、楽しいときは別よ? 楽しいときはむしろ時間の流れを遅くして まぁいいわ、ようやく、私の時間だから。 「ハルヒ、さっきはどうしたんだ?」 不意に前の席から声がかかる。 なんでもないわよ、さ、行くわよ 「行くって?」 SOS団に決まってるじゃない! 「あ、ああ」 私は彼を残して教室を飛び出る。 待ちに待った放課後の時間。 待ちに待ったSOS団! さぁ、今日は何をしようかしら。 みくるちゃんにどんな服着させようかな。 そういえば昨日ネットオークションにかけられてたコスプレどーなったんだろう。 落札できてるといいな。 頭からどんどん湧き出る期待を胸に、私は意気揚々と文芸部室へ飛び込んだ。 部屋には有希と着替え中のみくるちゃんがいた。 「やっほぉー!」 「あ、こんにちは涼宮さん」 挨拶はもっと元気よくしなさい! そうね、語尾ににゃんとかつけるといいわ、かわいいから。 30分後、キョンが遅れてやってきた。 遅い! なんで私と同じクラスなのにこんなに遅いのよ! 「ちょっと成績のことで岡部とな」 なんなら私が一から教えてあげてもいいわよ? 丁寧に、かつわかりやすく。 「いい、隣で『なんでこんな簡単なのわかんないのよ、もーぅ』とか言われたくないから」 失礼ね! そんなこと…………ないと思うわよ? 保障はできないけど。 うん、100%なんてこの世に存在しないんだから。 「そういえば古泉は?」 古泉くんならさっき学校を出て行くのが見えたけど? 「古泉一樹は用事のため早退」 あら、有希、聞いてたの? 「昼休みに少しだけ」 理由はわかる? 「不明」 そっか。 楽しい部活の時間が過ぎていく。 有希が本を閉じた。 それは部活終了の合図。 いつも凄く正確で、驚くぐらい。 私は荷物をまとめて部室を出る。 明日は土曜日ね、いつもの場所でいつもの時間に!古泉君にも言っといて。 最後にそう皆に伝えた。 登校の時はキツめの坂道を、私は悠々と、一人で降りる。 ずっと、皆といられたらいいのに。 ふと、立ち止まる。 ずっと、いられたらいいのに? 不意に、不安が、私を掴む。 どうしてこんな気持ちになるの? わからない。 まるで、この日常が壊れることへの不安? 気にしすぎよ、少しは体もやすめないと壊れちゃうわ。 違う。 何が違うのかはわからない。 けど、何か違う。 いつも感じる日常とはまた別。 退屈という名のナイフじゃない。 これは何? 不安で足を早める私。 家について、ご飯を食べても、まだ私に絡みつく。 お風呂を浴びてさっぱりしても、何なのこれ。 部屋の中で電気もつけずに、私は枕を抱きかかえる。 ふと、思いついた。 ピリリリリリリ 「もしもし?」 キョン、私だけど。 「どうした」 ……… まただ、なんで私またキョンに? 「明日、ちゃんと来てよ?」 …今更じゃない、私? キョンは予定をサボったりはしない。 少なくともいつもはそうだったし。 「どーした?」 何が? 「なんか、今日のお前変だぞ?」 気のせいよ。 「…そうか?」 そうよ。 「わかった、明日もちゃんと行く」 絶対よ? 遅刻したらまたおごりだからね! 「遅刻しないでもおごるのは俺じゃねーか」 つべこべ言わないの! 「へいへい、じゃ、また明日な」 あ、キョン。 「ん?どした」 ……なんでもない。 「?」 明日、ちゃんと来なさいよ? 「わかったわかった、んじゃな」 電話が切れる。 なんだろう、この気持ち。 カーテンを開けて、窓の外を見る。 どこまでも広がる、星の瞬く夜空。 3年前に校庭に書いたメッセージは、どこかで誰かが読んでるだろうか。 その日の月は、とても綺麗だった。 ふぁ~。 よく寝た。 夜空を眺めながら、私はカーテンを開けて寝た。 そうすれば私は安心できたから。 昨日、あんなに不安でいっぱいだった頭も、一晩寝たらすごく軽かった。 結局なんだったんだろう、あれ。 まぁいいわ、準備して行きますか。 キョンより早くいかないとね、おごりはあいつ、私じゃないわ。 そこについた時、キョン以外のメンバーはすでにいた。 やっぱりできのいい団員がいると違うわね、うん。 みくるちゃんはやっぱりかわいいわね、私服も。 「そーですかぁ?ありがとうございます」 ほんとにかわいい、もし私が男だったら襲ってるわ、間違いなく。 有希、いつも眠そうだけど、ちゃんと寝れてる? 「大丈夫」 いつも通りの口調で返答される。 ならいいんだけど。 古泉くん、なんで昨日早退したの? 「少し親族のほうに急な用事ができまして」 肩をすくめて笑顔で答える。 ふーん、ま、いいわ。 にしても、キョンはいつも遅いわね。 いっそのこと集合に遅れないように私が毎朝電話してたたき起こしてやろうかしら。 時間が過ぎていく。 遅い! 遅い! 本当に遅い! もう一時間も遅刻してるじゃない! 携帯に連絡しても出ないし! なんなのよもう! それにしても遅いわね! 何してるのかしら! もう一度携帯電話に手を伸ばす。 こうなったら出るまでずっとかけてやるんだから! ピリリリリリリリ…… ガチャッ あら?繋がった? 「ハルヒちゃん?」 出たのは、キョンの母親だった。 なんで? 予想もつかなかった。 考えたくもなかった答えが返ってきた。 うそよ! 公道を私達を乗せた車が疾走しついく 「きっと、大丈夫ですよ、涼宮さん」 ありがとう、みくるちゃん。 そうよね、大丈夫よね。 うん、じゃなきゃ許さないわ。 絶対、絶対許さない。 だって、だって約束したじゃない、今日絶対来るって、昨日。 「もうすぐつきます」 古泉くんが呟いた。 走る窓から病院が見えた。 キョンが倒れた? ありえない。 そんなベタな展開、認めないからね。 さようならも言えずに、サヨナラなんて、そんなの認めないからね! 原因は何? なんで倒れたの? なんでキョンなの? どうして今日突然? 昨日までピンピンしてたじゃない! 病院につくと同時に、私はキョンの入院してる部屋まで駆け出した。 前もあったっけ、こんなこと。 クリスマスパーティの準備中に、あいつがいきなり。 やだ、思い出したくない! いやよ!いやよいやよ、いや! 気を失ったキョンの顔。 でもあの時は、ちゃんと起きたわよね。 そうよ! 今回も大丈夫なはず! じゃなきゃ許さない! 約束したじゃない、来るって! 胸へとつかえる何かを感じながら、私は病室のドアを開いた。 そして感じた、視線。 私を見つめる、妹ちゃんの目。 キョンの母親の目。 お医者さんの目。 そして、 キョン!よかった! キョンが私を見ていた。 意識は戻ってたらしい。 心配かけるんじゃないわよ!バカ! 私はキョンに駆け寄って、まくしたてた。 ホントは別のことを言いたかったけど、とにかく、無事でよかった。 ほんとに、よかった。 なんでそんな目で私を見てるの、キョン。 まるで、初対面を見るような─── 「ごめんなさい、あなたは、誰ですか?」 ―――――嘘って言ってよ 私は望んでいただけ そしてあいつは、それに応えてくれていた 私は調子に乗っていたのかもしれない 一度も、あいつの事を考えてあげなかった いや、考えてはいたのよ でも、結果的に、私はあいつを蝕んでいた そして、あいつが手のひらからこぼれおちた時 ようやく、そのことに、気がついたの キョン? 「キョンというのは、俺のことですか?」 何言ってるの? キョンはキョンよ、あなたでしょ 「すみません」 なんで謝るの? なんで?なんで?なんで? 「ごめん、なさい」 胸が痛む。 本当にキョンは申し訳なさそうな顔をする。 やめてよ。 「え?」 こんなの、キョンじゃない…… 「落ち着いてください、涼宮さん」 …みくるちゃん 「少し、話をしてもいいですか?涼宮さん」 キョンに聞こえないように私に呟く古泉くん。 古泉くん、話って何? 「彼の記憶喪失の原因についてです」 記憶、喪失? キョンが? うそよ、何それ。 何それ何それ何それ。 もしかしてそれが倒れた原因? 「医師の話によると倒れた理由も記憶を失った理由も同じらしいです。」 廊下で医師から一通りの説明をうけたあと、私は古泉くんと話していた。 古泉くんが続きを述べ始める。 「彼の精神は極度に疲労していた、それが倒れる原因になったと」 疲労? だって、そんなそぶりは一度も。 「長い間に蓄積されたものらしいです。」 どういうこと? 「例をあげて説明しましょう。 フラッシュバックというものがあります。 麻薬の一部には使用することで幻覚を見るものがあります。 その時の感覚が忘れられず人は使用を繰り返し、何度も使用するうちに麻薬は人の体を蝕みます。 重度の中毒者になった場合は、麻薬の恐ろしさに気づきやめるでしょう。 しかし、たとえ長い時間をかけて回復しても、ふとしたきっかけで全てが麻薬をしていた状態に戻ってしまうことがあります。 それが、フラッシュバックです。」 必死に理解する。 「つまり、彼の中には長い間精神的疲労、言わばストレスがたまっていきました。 しかし、そのストレスは小さなもので、簡単に消えていったはずです。 それが、何かのきっかけで消えたはずのストレスが一気に戻ったとします。 いわばストレスのフラッシュバックと言いましょうか、そうして、彼は倒れたのです。」 どうして? つまり悩みを抱えていたんでしょ? どうして私に言ってくれなかったの? 「それは、おそらく」 そこまで言って、古泉くんは口を閉ざした。 いつになく真剣なまなざし。 知ってるの? じゃあ、教えて。 「だめです」 なんで 「だめなんです」 教えないさいよ! 「涼宮さん……」 いいから、教えろって言ってんでしょうが!! ふと、気がつけば有希が隣に立っていた。 何? 「あなたは、知るべきではない」 何それ なんでよ? 「後悔する」 なんで? 「選択して」 何を 「知りたい?」 当たり前じゃない 「わかった」 「長門さん……」 「彼女は選んだ、知ることを。 だから伝える。」 「……わかりました」 「彼のストレスの原因は、」 私は言葉を待った。 沈黙で耳が痛くなった。 「あなた」 わたし? なんで、私なのよ。 「本当に、おわかりでないんですか?」 何を。 真剣なまなざしで、いつもと違う、怖い顔で私を見る古泉くん。 「彼はいつもあなたに合わせてきました」 ………… 「そしてあなたはまれに彼の精神レベルを超えた要求をしていたんです」 ………て 「それが彼のストレスとなった」 ……めて 「彼はあなたにこたえるために、いつも無理をしてきた」 …やめて 「彼はお人よしですからね」 やめて! 私は気がついたら両耳を抑えて叫んでいた。 「知ることを選んだのは、あなたです」 古泉くんは私に追い討ちをかける。 「だから伝えました、真実を」 いつからだったのだろう──── ────世界に色がついたのは いつからだったのだろう──── ────静寂に音楽が流れ始めたのは いつからだったのだろう──── ────いつも笑ってられるようになったのは いつからだったのだろう──── ────私の心にあいつが現れたのは いつからだったのだろう──── ────私の中のあいつがこんなにも大きくなっていた いつからだったのだろう──── ────あいつは、私にとって必要な人になっていた …ごめんね 私は泣いてた。 ごめんね、ごめんね、キョン 俯いて、両手で、顔を覆って。 ごめん、ごめん、ごめんなさい 有希が、倒れこもうとする私の体を支える。 「今日は、もう帰りましょう」 古泉くんがいつもの優しい口調になって喋る。 「あなたも、少し休むべきです」 うん、ごめんね。 「大丈夫です、おそらく一時的な記憶の混乱です、すぐに治りますよ」 そうね。 治ったら、いいな。 うぇえ… 「涼宮さん…」 どうやって帰ったのか覚えていない ただ、体がすごく重たかった ご飯は、全然おいしくなかった お風呂は、全然気持ちよくなかった どれだけ泣いたんだろう 枕は涙でびしょびしょだった でも、涙は枯れなかった 枯れてくれなかった 枯れるどころか、どんどん溢れでる 私にとって、それほどに大きくなってたんだ キョン 私は呟いた そして、泣き疲れて、寝てしまった 闇が、私を包んでいく 再び目を覚ましたとき、灰色の空の下、私は駅前の公園に居た。 そして、キョンがそこにいて、私を見ていた。 前にも似たような夢を見た。 夢よね? 夢、だよね? 目の前に立つキョンが私を見つめる。 私は耐えられなくなって視線を逸らす。 「ここは?」 キョンも驚いたような声を上げる。 当たり前よね、なんで私夢の中でまでキョンに迷惑を── 「ここは、覚えてる」 キョンが呟いた。 私は、はっとして彼を見据えた。 覚えてるって? 「なぜかはわからない」 キョンは私と目を合わせた。 私は今度は逸らさずに彼の瞳を見据えた。 申し訳なさそうな、でも、力強い瞳。 「ここに来なきゃいけない気がしたんです」 なんで? 「約束したから……」 私は、また泣いた。 ありがとう、覚えててくれて。 声を上げて泣いた。 ごめんね?ごめんね? ほんとに、ごめんなさい 私のせいで、私の、せい、で ふと、私の体がひっぱられた。 背中にキョンの左手が回される。 頭をキョンの右手が撫でる。 暖かい。 ありがとう。 ありがとう。 ありがとう。 もう少し、このままで。 「何、泣いてんだハルヒ」 ――――っ!キョン? じっとあいつの顔を見つめる。 いたずらっこみたいな表情で私を見る。 もしかして、記憶が? 「迷惑かけたようだな、悪ぃ」 軽く悪びれたそぶりで語るキョン。 迷惑? 迷惑かけたのは私のほうなのに? 「ハルヒ?」 私は、あなたにむりをさせたのよ!? 私は、あなたにわがままを押し付けたのよ!? 私は、私は、私は、あなたを、縛り付けたのよ!? 私、あなたに………謝りたかった 「ハルヒ」 何? キョンが私の目を見る とても力強く、決心したように。 私を抱いていた手に、力が入る。 痛いぐらいに、でも暖かい。 「どうして、俺がお前のわがまま聞いてたか、知ってるか?」 え? 「お前のことが大切だったからだ」 ………キョン? 「ハルヒ、俺はな、お前のことが──── え。 ふいに、目を覚ました。 頬を伝う涙。 体に残るあいつの温もり。 ベッドから降りる。 携帯を鳴らす。 再び、彼のもとへ 今度こそ、言えなかった言葉を。 ごめんね、と。 ありがとう、と。 そして───── ピリリリリリリ…… カチャッ 「もしもし?」 キョン? 「どうした?わがままな団長さん」 - 涼宮ハルヒの羨望 終 - 涼宮ハルヒの羨望、外伝 笑ってくれる 私のために 私みたいなわがままなヤツのために 嬉しかった すごく嬉しかった 私のわがままにつきあってくれる それがたまらなく嬉しかった ある雨の降る放課後 私とあなたしかいない部室 寝ているあなたにそっと呟いた ――――ありがとう ‐ 終 ‐
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5455.html
SOS団に平和な空気が広がり 長門と古泉は膝を突き合わせてヒソヒソ話し合っている 今日はハルヒも来ないし つまらないので帰ろうかなと思っていた するとドアに小さなノックがあった 長門も古泉も立ち上がろうとしないので、仕方なく俺が立ってドアを開けた そこには俺の精神安定剤的頭痛不安イライラ解消お人形さんが立っていた 「あの…あのぅ…わわわわたし…」 どうしたんですか朝比奈さん? ご無事で何よりです とても大活躍だったそうで、まあいろいろありました こんな所に立ってないで、さあ中にどうぞ 「あのっ、わたし、ここに入ってもいいんでしょうか?」 朝比奈さん? どうしたんですか? 朝比奈さんはカバンを胸に抱え、内股に閉じたかわいい膝小僧をカクカクさせている この姿はまさに、最初にハルヒに拉致されてきた時と同じだ 「何か全然覚えてないんですぅ…学校に来て授業を受けて、その後何をしたらいいのか全然分からないんです でも何となくここに来なくちゃいけないような気がして、それで…」 まあどうぞ朝比奈さん、とにかく入りましょう 俺は小さな朝比奈さんの肩を抱くようにしてとりあえず中に案内した フワリとした巻き毛から爽やかな香りが立ち昇る ああこれは気持ちがいい 「え、ええとあの、わたしはここで何をしたらいいんでしょうか?」 えっと、まずはメイド服に着替えて、それからお茶を入れて、それはいいですからまずはどうぞ座って下さい 「あの…キョンくんってあなたですか?」 はい? まさか朝比奈さん 本当に覚えてないんですか? 俺の事もハルヒの事も? 「ななななんとなくは記憶があるんですけど、禁則事項で禁則事項してから後の事とか、禁則事項に行って転んで泥だらけになって禁則事項に会って、そして禁則事項の事がちょっと気になって禁則事項で調べたたら今度はは禁則……」 ああもういいです朝比奈さん とりあえず座って落ちつきましょう 「あの…今朝学校に来てから気がついたんですけど、私のカバンにこんな物が入っていて、それでキョンくんに…」 そう言って朝比奈さんはカバンから封筒を取り出した かわいい花柄のファンシーな封筒の送り主はもちろんすぐに分かった 表書きにはきれいな大人文字で『これをキョンくんに渡して下さい』と書かれ、裏面には小さく『朝比奈みくる』と書いてある 俺の頭に?が点滅した はて? 朝比奈さん(大)の存在は俺にも分かっている 何せつい今朝死ぬほど厳しいお説教を食らった直後だ でも朝比奈さん(小)には禁則のはず 朝比奈さん(小)に手紙をことづけるのにわざわざ自分の名前を書くとは? おっちょこちょいの朝比奈さん(大)が慌てる所を想像したがすぐに気付いた 朝比奈さんは俺に手紙を出すとも言っていた 早朝に現れたのはイレギュラーだから予定にない行動だったのだろう あの時はもう現在の朝比奈さんに手紙を持たせた後だったのかもしれない なのに朝比奈さんは何も言わなかったって事はこれは規定事項なのか? 考えるより行動した方が早い 俺は封筒を開けて中から1枚の便箋を取り出した 今の朝比奈さん(小)よりもかなり達筆になった筆跡で書かれていた 「キョンくんへ あなたのおかげで未来は正常な姿に戻りました 本当に感謝しています いつまでも自分に正直に生きて下さい そうすれば、あなたの想いは必ず実を結びます 涼宮さんを大切にしてあげて下さいね 朝比奈みくる P,S, そこにいる私はかなり混乱しているはずです めまぐるしい時間移動でTPDDのキャパシティがオーバーロードしちゃいました。あの異世界空間の影響と涼宮さんの力が合わさって、通常では考えられない動作をしちゃったので、しばらくその状態が続くと思います もしかしたら長門さんが修理してくれるかもしれないけど、数日経てば元に戻りますから心配はいりません それでも若干記憶が欠損してる部分もあると思いますので すみませんけどいろいろ教えてやって下さい あなたには禁則事項はありませんから これからもそこにいる私をよろしくお願いします」 俺は3回読み返してから手紙を朝比奈さんに渡した もうこの手紙を見せてもいいだろうと思った どうやら今回の事で、朝比奈さんは出世の階段を1つ上がったようだ 少なくとも朝比奈さん(大)の存在を明らかにしてもいいという事が まるでルーブル美術館から強奪されたフランス人形のように、かわいそうにぶるぶる震えている朝比奈さんはおっかなびっくりその手紙を読んでいたが、当然事情は全く把握できていない 「ななな何で私の名前が書いてあるんですかぁー? 何で記憶がなくなってるんですかぁ? TPDDって何なんですかー? 禁則事項って、もしかしたら禁則事項の事かなぁー?」 朝比奈さん ちょっと落ち着きましょう とりあえず心配はいりませんから ここはあなたの部室です 手紙に書いてある通り、すぐに記憶は戻りますから 何でしたら長門がすぐに 「禁則」 ああそうだった とにかく心配する事はありませんから 「これは面白いですね TPDDにも副作用があったとは やはり長門さんのおっしゃる通り、まだまだ開発途中だという事ですか」 「通常はあのような条件でTPDDを多用する事はないと想定されていた あれはあくまでイレギュラーなイベント でも開発者は今後十分認識しておく必要がある あの時の朝比奈みくるのTPDDの使用方法はまさに画期的 これからの改良に多大な経験値を与える事になる、はず」 気がつくと古泉と長門も朝比奈さんの背後に立って一緒に手紙を読んでいた 古泉の手がさりげなく長門の腰にまわされている ムカつく 「何も心配いりませんよ朝比奈さん 僕たちがついてますから この手紙に書いてある通り、あなたはすごい事を成し遂げた これは自慢すべき事です」 「そっそっそっそうなんですかぁー?」 ようやく朝比奈さんが落ち着いたので 本来ならここで俺にとってのルイ13世である、朝比奈ブランドの最高級日本茶などを味わいたい気分なのだが、メイド姿に着替える事も忘れている今の朝比奈さんにそれを要求するのは酷だろう 古泉と長門はヒソヒソ何かを話しているし、仕方ないか 俺は立ち上がってお茶の用意をした ヤカンでお湯を沸かしながら急須にお茶っ葉を投げ入れる お湯が湧くのを待っている間に胸ポケットに入れた携帯がブルブル震えた ハルヒからだった しかもメールじゃないか いつものハルヒはメールを送るようなまどろっこしい事は絶対にしない こちらの都合も考えずに名前も名乗らず用件だけを告げ、返事も聞かずに切ってしまうようなヤツが何でわざわざメールなんかするのだろう そもそもあいつがメールの打ち方を知っていたとは初耳だ 「駅前にバイキングのお店が新しくできたみたいよ 本日17時オープンしかも初日に限って半額だって!」 時間を見るとまだ4時10分過ぎだ お茶を飲んでからでも間に合うだろう お湯が沸騰したので急須に注ぎ、全員に配ってやる 古泉の前に置く時だけは憎しみを込めてドンと叩きつけた 自分の席に座ってさしてうまくもないお茶をズルズルすすり 呼吸を整えてからハルヒに返信した 「お茶飲んだらみんなで行くからそこで待っててくれ」 携帯を閉じて胸ポケットにしまい、再び湯呑みを手にするとまた電話だ 今度はハルヒからの普通の電話だった また携帯を取り出して開き、耳に当てた 「バカキョン!!!!!!!!!!」 携帯の小さなスピーカーから聞こえてきたほとんど原音のままの大音響は、俺の右耳から入って脳内を7周半ほど高速で駆け巡り、左の耳から抜けて部室中に轟音をとどろかせた おそらく部屋の全員が聞いていたのだろう 古泉も長門も、そして朝比奈さんまでもが口をポカンと開けていた 「な…な…何だったんですか今のは?」 俺はすでに切れていた携帯を閉じて、5秒で状況を説明した まだ鼓膜がジンジンしていて右耳がおかしい 鼓膜が破れたらハルヒに治療費全額負担させてやる 「やれやれ……」 おい古泉 それは俺のセリフだ 「長門さんと話していたのですが、今回の事で涼宮さんの精神に重大な変化があったようです。これは機関も同意見です 近々我々の任務にも大きな変革が訪れるかと期待していたのですが、長門さんによるとあくまで暫定的なものらしいですね 朝比奈さんからの手紙がどういう意味を持つのか、それは今から考える事ですが、長門さんの暫定的という意味が今分かったような気がします」 何だ古泉 もうちょっと分かりやすく言え 「つまり涼宮さんの精神は今は安定していますが、それはあくまで一時的なもののようですね 再び爆発する可能性が非常に高いという事です そして次に爆発するとしたら、その原因を作るのは間違いなくあなた あなたの今後の行動次第では、すでに力を自覚してしまった涼宮さんが何を始めてしまうか、予想するだに恐ろしいとはまさにこの事です」 すまん古泉 俺の取った行動のどこがおかしいのか、箇条書きにして説明してくれ 「あっあの・・・キョンくん すっすっ涼宮さんは、キョンくんと2人で行きたかったんじゃないかしら?」 うっ 「だから内緒でメールにしたんだと思いますぅ」 「ふふふ、お分かりでしょう。もう涼宮さんは大きく変わり始めています 早起きして弁当を作ったり、あなたが居眠りなどしないように気を配ったり そこまで献身的にあなたの事を考えてくれている涼宮さんなのに 当のあなたがこの調子ではね」 分かったよ じゃあこのお茶飲んだら行くから みんなも気をつけて帰れよ その時長門が突然立ち上がった 何年か前にどこかのアニメでやっていたような舌足らずのゆっくりした声で 俺は長門が物真似までできる事を初めて知った 「まったくお前はどこまで他人に迷惑ばっかりかけて生きているんだ そろそろ他人の気持ちを考えられるように努力できないのかよ いつになったらお前は学習能力というものを身につけるんだ いいからさっさと出て行きやがれ、この大バカ野郎」 俺は長門のすさまじい殺気を感じた 急いでカバンを引っつかみ、部室を出ようとした 追い打ちをかけるように、長門の詠唱が響く まさかこの俺が、長門の呪文の餌食になってしまうとは… 「………」 間一髪、有機情報連結の解除から逃れた俺は校門に急いだ 昇降口で靴を履きかえるのももどかしく、転がるように学校の外に出た その瞬間だった 背中を見えない手で押され、俺は時速100km近い速度で坂を駆け下りた 途中で何人もの通行人とすれ違うが、そのたびに鋭い横移動に体を揺さぶられ、襲いかかる横Gに気分が悪くなってくる 赤信号は全て俺の手前で青に変わり、2分もかからずに駅前の広場に着いた 腕組みをして待ち構えるハルヒの目の前数cmの所で、俺は急停止した 「わ……」 すさまじい加速と激しい横G,それに恐怖と緊張感で、俺は汗びっしょりだった 吐き気が喉元に突き上げてくる トイレはどこだ? 「あんた、えらい早かったじゃないの。ってか早すぎ」 ちょっと待っててくれハルヒちゃん 俺は公園のトイレに急ぎ、汚物を処理した 何度もうがいをして顔を洗い、ようやく一息ついてからハルヒの元に戻った 「1人なの?キョン」 ああ1人だ 「みんな連れて来るって言ったじゃないの」 いやそれは訂正します 訂正させられた 「何でこんなすごい勢いで走ってきたの?」 それは禁則で ああもう禁則じゃないのか 長門が怒り狂って俺に呪文をかけた 「有希が?呪文?」 そうだよお前ももう見ただろ 「あたしにもかけてくれるかしらね?」 長門に聞いてみろ 「面白そうねそれ!ちょっと学校に戻りましょうよ、今すぐに!」 ハルヒ、それは明日でいいだろ 今から学校に帰ったら俺は間違いなく長門に殺される 「何よもうキョン!」 ハルヒ 俺は学校で長門に呪文かけられて喜んでるお前よりも 俺と2人でメシ食ってるお前を見てる方が今は楽しいんだ 「キョン?」 本当だ。だから今日はメシ食いに行こう。半額なら俺がおごってやれるから お願いですから俺と一緒にバイキング食べに行って下さい ハルヒはやっと笑顔に戻ってくれた 両目と口が同じ大きさの正三角形になった 「ふっふーん!いいわ!あんたがそう言うんならね! でもまだ早いからちょっと歩きましょう!」 そう言ってハルヒは俺の腕を取り、さっそうと歩き出した ハルヒの髪からは甘いいい匂いが漂い、柔らかな胸のふくらみが俺の腕に伝わってくる ありがとう長門、俺を分かってくれて お前のジョークにはこれからさんざん振り回されそうな予感がするけど いいんだよなこれで SOS団は全員がハッピーエンドを迎えるんだよ そう 全員だぞ絶対に 涼宮ハルヒの共学 完
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1554.html
「二人のハルヒ 第1部」 今の季節は、夏である。 夏休みまで、あと少しなので生徒達もハイテンションになるようにケージ溜めてる所だろう。 俺は、今、あり得ない事が起きてしまった。 疲れてるのは俺か?世界か? こういう時は、「あ、ありのまま起こった事話すぜ!」と使うんだろうな。 その理由は、今から30分前である…。 俺は、いつものように学校が終わり、部室へ向かった。 毎度ながら、部室の前でノックする。 これ社会人として重要なマナーだぜ! 「どーそ!」 やけに、声が高いと言う事はハルヒがいるって証拠だが…。 俺は、見てしまった…凄いの見てしまったのである。 入ると、団長席にハルヒがいる…訳だが。 何が雰囲気がおかしい。 取りあえず、声掛けてみる。 「どなたですか?」 と言った途端、その人は立って俺の所へ来やがった。 「あ、キョン!あんたはキョンなんだよね!」 いきなり、俺の事を呼び捨てされた。 よく見ると、20代ぐらいの綺麗な女性で、教師っぽい服装を着て、頭に黄色いカチューシャを付けてる。 どっかで会った事あったっけ? 「あのー…俺は、あなたと会うのは初めてなんですけど」 「ん?あー、ゴメンゴメン!」 本当に、テンション高い女性だな。 「私は、未来からやって来た涼宮ハルヒよ!」 …WHY?俺の頭がおかしくなったのか? えー、こういう時は…Who are you? 「だーから、「未来からやって来た涼宮ハルヒよ」って言ってるの!分かる?高校のキョン君!」 な、な、何だってー!つまり、この時代のハルヒは高校1年。 そして、今、俺の目の前にいるのは未来からやって来たハルヒである。 普通は朝比奈さん(大)が出てきてもおかしくないのに、何故か未来のハルヒがここにいるんだ? ここの時代のハルヒをハルヒ(小)で、目の前にいるハルヒはハルヒ(大)しておこう。 「えーっと、何でハルヒさんがここに?」 ハルヒ(大)をさん付けするのは変だが、仕方ない…相手は年上だからな。 「…実はね、みくるちゃんが風邪引いちゃっててさ、みくるちゃんの代わりにここへ来たの」 はぁ、朝比奈さん(大)が風邪って珍しいですねぇ。 「まぁーね、みくるちゃんとは古い友達だから断りにくいからね」 それはそれでいいとして、何故、朝比奈さん(大)は未来人だと知ったんですか? 「ん、時が来れば分かるけどね!古泉君の正体…有希の正体も分かるよ」 「そうですか…」 『時が来れば』って事は、いつかバレるんだな…。 「さてと、カチューシャを外してポニーテールするわ、あんたはポニーテール萌えなんでしょ?」 Yes、そうですよハルヒさん。 ハルヒ(大)は、カチューシャを外してポニーテールした。 今のハルヒ(小)よりハルヒ(大)の方が綺麗ですなぁ…。 と感心してる内に、ハルヒ(小)がやって来たのである。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ で、今至る…。 「やっほー!皆、いるー?」 相変わらず、声が高いハルヒ(小)である。 「あれ?キョン、この人…誰?」 ハルヒ(大)がいる事に気付いたハルヒ(小)。 どうやって、誤魔化すか…。 「えー…この人は…」 と言ってる内に、ハルヒ(大)が言った。 「始めまして、私はキョン君の従姉の鈴見ハルカって言うの!訳があって、ここへ来たの」 流石、嘘も上手いな…ハルヒ(大)よ。 「そうなの?…あたし、涼宮ハルヒ!ここの団長よ!よろしくね!」 いきなり、丁寧語無しか?ハルヒ(小)よ。 「ふふふ…」 ん?どうしたんですか、ハルカさん 「んー、ハルヒちゃんって可愛いわねぇ!いじめたくなるわぁ~」 と、ハルヒ(小)の胸にわしづかみした。 「わわわわ!何するのよ!」 「んー、ちょっと…私より小さいわねぇ…可愛いから、いじめたくなるわぁ!」 この性癖は変わってないな、ハルヒ(大)は。 「わぁ、ち、ちょ、ちょっと待っ…、コラ!キョン!見るな!」 わしづかみされるハルヒ(小)、わしづかみするハルヒ(大)。 変な光景ですな、フロイト先生。 とにかく、止めさせよう。 目のやり場が困るからな。 「ハルカさん、もうやめたらどうです?」 「ん、あ…ゴメンゴメン!私、可愛い子がいるとつい…」 ハルカさんは、ちょぴっと舌を出して、手で軽く自分の頭を叩いた。 それ、反則です!ハルカさん! 「あー、吃驚した…」 「ゴメンね、ハルヒちゃん」 「う、うん…許すわ」 しかし、何でしたのだろうか。 ハルヒの目を盗んで、聞いてみた。 「ハルヒさん…何でしたんです?」 と、俺は小声で言った。普通の声で言うとバレるからな。 「ん、何か…昔の私を見ると、何かムカついててさ…」 そうですか、ハルヒ(大)はもう大人になってる。 確かに、昔の自分がバカな事をして来たから、今思うとムカツクと言う気持ちは分かるな。 「とにかく、ハルヒを嫌がらせしないで下さいよ」 「分かってるわ、この時代の私は隠れた能力あるからでしょ?」 これは驚いた。ハルヒの能力も知る日が来るのか…。 この後、古泉、朝比奈さん、長門が来た。 皆が集まった所で、ハルヒが元気良く… 「さぁ、SOS団ミーディング開始よ!」 と言った。 内容は、明日は土曜日であり、不思議探しを行われる事になった。 「キョン!明日9時に集合よ!来なかったら、死刑よ!」 やれやれ…やっぱ俺の奢りだな、これは…。 「ハルヒちゃん、ちょといいかしら?」 と、ハルヒ(大)が言った。 「何?ハルカさん」 「明日…私も来ていいかしら?」 ハルカさん、何言ってるんですか。断るに決まってますよ。 「んー…そうね、来ていいわよ」 何ですと?俺の従姉なのに?(そう言う設定になってるけどな) 「いいじゃない、一人二人増やしても構わないわ」 と言いつけ、ミーディングが終わった。 帰り道、ハルヒ(大)と一緒に歩いている。 「どう言う事です?ハルヒさん」 「ん、何か?」 ハルヒ(大)は、懐かしそうに周りを眺めてる。 「何故…不思議探しに参加するのです?」 「懐かしいからよ…それに、やらなければならない事あるの」 「やらなければならない事って?」 「それは…やっぱ、みくるちゃんがよく言う「禁則事項」って事かな?」 「そうですか…」 「でも、この時代の古泉君や有希なら知ってると思うわ」 「分かりました…」 しかし、大人になったハルヒは綺麗だな。 ふと、気になった事あるので、聞いてみようか。 「二つ質問あります」 「何?」 「結婚してますか?」 「ん、結婚してるわよ」 「そうですか…もう一つは、あなたは何歳ですか?」 「あはっ、禁則事項よ」 ハルヒ(大)の指が俺の口に当て、ウインクした。 ぬぅっ、こりゃ9999ダメージで即死だな。 「じゃあ、私は有希のマンションで泊まるわ」 「あ、はい」 「本当は、あんたの家で泊めたがったけどね…」 泊めてもいいですよと言いたい所だが、親にどう説得してくれるか分からないからな。 「じゃ、まだね」 と言いつけ、解散した。 やれやれ…明日は、どうなるんだろうな…。 次の日 予想通りに、俺は遅刻してしまった。 「遅い!10分遅刻!奢り!」 朝から大声で言うな…ハルヒよ。 「やっほ、やっぱ…遅刻したのね」 ハルカさん、笑わないで下さいよ。 「ゴメンね、キョン君の代わりに私が奢ってあげるわ!いいでしょ?ハルヒちゃん」 ありがとうございます、ハルヒさん。 「ここはバカキョンが奢ってあげるべきよ!」 ハルヒ、お前は鬼だ!裁判に訴えるぞ! 「それでも、今回は私が奢ってやると言ってるから、いいじゃないの」 色々、話した結果…ハルヒ(大)が奢る結果となった。 後で、お礼言わないとな。 「さ、いーっぱい食ってなさい!」 「あのー…」 「何?キョン君」 「ここでいいんですか?ここ、金高いですよ?」 そう、ここは、金が高い高級レストランである。 「いいじゃないの、私は大人なんだから!金に余裕あるわよ」 「いいんですか、じゃ言葉を甘えていただきましょう」 おぃ、コラ!古泉、勝手に話を進めるな。 「ふぇ~、いいんですかぁ?」 「いいのよ、ハルカさんの奢りだからね」 遠慮って言葉知らんのか、ハルヒよ。 「ひひんひゃはいほ(いいじゃないの)」 食ってから言えよ、食ってから。 さて、長門は…。 「……(ヒョイ パクッ ヒョイ パクッ」 こいつも、遠慮って知らないのか…。 目から汗が出て来たような気分だ。 …俺も食べるか。 合計 12000円也 理由 ハルヒと長門、注文し過ぎ 流石、ハルヒ(大)も呆然したみたいだ。 「キョン君」 はい、なんですか? 「実はね…この時代にいる事にしたのよ」 WHY? 「昨日、みくるちゃんの上司から、そう言われたの」 マジですか? 「と言う訳でよろしくね」 はははは…ハルヒが二人…ハルヒが二人… 「キョン君!?ちょっと、しっかり!」 「どうしたの、ハルカさん…キ、キョン!どしたの!?真っ白になってるわ!」 ハルヒ、二人いるじゃねぇか… こりゃ、疲れが増やすだけだろ… 海…いや、朝比奈さんの上司のバカ野朗ーろーろー…(エコー) こうして、ハルヒ(小)とハルヒ(大)がいる生活が始まったのである。 第1部 完 第2部
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1055.html
第三章 7月7日…とうとうこの日が来てしまった。 俺は何の対策も考えていない。 何かいい考えは無いかと考えている間に午前の授業が終わった。 昼飯は一年の時と同様谷口や国木田と食べている。 卵焼きを突いていた谷口がこんなことを言い出した。 「涼宮って去年の7月7日おかしくなかったか?俺学校の帰り道で東中の前通るんだけどさ、 俺去年の七夕の日学校が終わってゲーセンによってから帰ったんだ。たしか8時ごろ、 東中の前を通ったら涼宮が校庭でずっと立ってたんだ、しかも雨が降ってたのに傘もささずに。あれなんか意味あるのか?あいつのやることはやっぱよくわからん。」 「ふ~ん、そうか」俺は平然を装った。なんとなく動揺しているのを見られるのはまずい気がした。 心の中では適当に済ませばいいなんて考えていた俺をもう一人の俺が殴っていた。俗に言う心の中の天使と悪魔と言うやつである。 そして悪魔のほうが天使にぶっ飛ばされたわけだが、天使が勝ったところでどうにかなるわけでもなく俺は途方に暮れていた。 午後の授業もあっという間に過ぎ、とうとう部活の時間だ、今日だけはあいつと顔を合わせたくないのだが行かないほうがめんどくさいことになる気がするので文芸部室へと足を運んだ。 すると足取りが重かったせいか俺が部室に着く時には全員がそろっていてハルヒが嫌な笑みを浮かべた。 この瞬間俺は背筋が凍りつくような寒気を感じた。 このときの俺はこれから何が起こるかなんて知るよしも無かった。 ハルヒは全員がそろったと言うことでこう言った。 「今日は七夕で不思議も油断しているかもしれないわ!今日はこれから久しぶりに市内探索しましょ!!」 なんだって?最近驚いてばかりってのに驚きだ。市内探索?今から? 実は今までに5回市内探索が行われたのだが、結局一度もハルヒとなることは無かった。 そしてハルヒは例のごとくどこにしまっていたのか爪楊枝を取り出し例のごとく俺たちは爪楊枝を引いた、 そして驚いたなんと俺とハルヒがペアになっていたのである。 その瞬間明らかに長門、古泉両名の顔が明らかにゆがんだ。 ハルヒは言った。「何であんたとペアなのよ。まあいいわ、足手まといにならないようにしなさいよ!」いかにもハルヒらしい発言が聞けて俺は安心した。 「わかってるよ。」そう言い返しておいた。俺はなんかうれしいかった、それが何故かはわからないが。 そして夕方5時過ぎに俺とハルヒは学校を出た、そして行くあてはあるのかと聞いてみたするとハルヒは当然のように「東中。」 俺はそうか何しに行くんだ?とわざと聞いてみた。 するとちょっと怒ったように「あんた昨日の話聞いてたの?あたしは人を探しているのよ!」と答えるハルヒ。 俺は何故か行ったらまずい様な気がした、しかし断る理由も無く、思いつきもしなかったため「冗談だ、なら急ごう」そう言ってハルヒの前を歩いた。 北校から中学まで30分ほどで着いた。着いたはいいがまだ部活やら補修やらで残っている生徒がいるようだこれでは中に入れない。 「どうする?ハルヒ。」と聞いてみる。 「そうね、今入るのはまずいわねどこかで時間を潰しましょう。近くにちょうどいい公園があるわ、そこに行きましょう。」 あの変わり者のメッカか…こいつも好きらしいな断る理由も無い。 「わかった。」と答えた。 公園に着くと二人でベンチに座った。傍から見れば完全にカップルだ。 お似合いに見えるかは置いといてだな。 「だいだい8時ぐらいまでは待ってなきゃだめだろうな。」と俺。 「そうね、後2時間ぐらいね」とハルヒ。 「なんか話しでもするか。」 そして俺たちはしゃべり続けた。 新しいクラスがつまらないこと、朝比奈さんのコスプレ衣装の希望、これからのSOS団の活動内容について、新しい担任がむかつく事 そしてあっという間に2時間が過ぎた。 ハルヒが時計を確認し「そろそろ時間よ、行きましょう」そして後についていく俺。 学校に着くとさすがに真っ暗で携帯のライトで周りを照らした。 そしてこの後俺は信じられない光景を目の当たりにする ハルヒがライトを向け俺の名前を呼ぼうとしたときだ。 「キョ… 涼宮ハルヒがいきなり倒れたのだ、俺は焦った。 こんなに焦ったのはハルヒが消失しちまったとき以来だ。 焦りながらも俺は古泉に電話を掛けた、後から考えればナイスな判断だったと思う。 「古泉!!ハルヒが倒れた!!!!」 「どうしました落ち着いて下さい。」 「北校でハルヒが倒れたんだよ!!」 「わかりました15分…いや10分で向かわせます。」 「わかった。早くしてくれ」 こんな感じだったと思う、あまり覚えていない。 たぶん10分ぐらいで救急車が着たんだろうが俺には3倍ぐらい長く思えた。 そして機関御用達の病院にハルヒは検査入院ということで入院した 第四章
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/518.html
暑い… ミンミンミン・・・ 暑い… ミンミンミン・・・ 暑い!! そう、今の季節は夏、太陽が怒ってる様に思えるぐらい暑い… まったく、部室にクーラー付けてくれんかね? 「文句言わないの!」 今のは、団長様のセリフである。 ハルヒ「冷凍庫にアイスあったでしょ?あれで我慢しなさいよ」 へぃへぃへぃ…ん?ハルヒの膝に、何か置いてある…ノートのようだ 「ハルヒ」 ハルヒ「何?」 「これは、何のノートだ?」 ハルヒ「え?……あー、あんたには関係無いの!」 俺には関係無いのかね…冗談でも言ってみるか 「…誰も知られたくないぐらいか?」 ハルヒ「ギクッ)そ、そんな…じゃないわよ!ほ、ホントよ!」 …何か、口調が怪しい…一体何のノートだ? ハルヒ サイド ヤバイヤバイ…… これは、誰も知られたくないのよね… だって、これは… キョンの事もいっぱい書いてあるのよね… 写真もあるし、あたしにとって、恥ずかしい文もあるしね… キョンにバレると…死んでしまうぐらい恥ずかしい!! …学校に持っていくんじゃなかったわね… キョン「なぁ、ハルヒ」 うわっ、吃驚した… 「な、何…キョン」 キョン「確かめたい事あるけどな…こういう噂を聞いたぞ」 う…噂? 「へー、どういう噂?」 キョン「何でも、皆に知られたくない物あるらしいんだって?」 なっ!?そ…それは、このノートの事!? 「デマよ、デマに決まってるわ!」 キョン「そ、そうか…悪かったな」 ちょっと、キョンの目線があたしが持ってるノート見てるよ~… これが怪しいと思ったのね…死んでもこのノートだけは守るわ! キョン サイド やっぱ怪しい!ハルヒは動揺してる感じだからな… しかし、気になるな…うーむ… 長門「私は知ってる…」 そうかぃそうかぃ…って、え?知ってるのか? 長門(ゴクリ) 「じゃあ、何だよ?」 長門「…それは、言えない…アレは、涼宮ハルヒにとって、大切な物」 そうか…スマン… 「…何だが気になるなぁ」 そう言い、一日は終わった… だが、これで終わりではなかった… 次の日…事件が起きたのである ハルヒ サイド さて、寝る前、あのノートを取り出すかな… ………ん? ちょっと待って、疲れてるのかしら?あたし… あのノート無ぁぁぁぁい!?ちょっとちょっと!? どういう事?えぇい…思い出すのよあたしよ!! 下校 ↓ SOS団員と一緒にキョンの家へ ↓ 鞄は、リビングに置いて、キョンの部屋へ ↓ 楽しく会話 ↓ 鞄を取って帰る …まさか、まさか!? い、い、い、い、 いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…ぃゃぁぁぁぁぁぁ…ぃゃぁぁぁぁぁ…(エコー) キョン サイド ふわぁ…眠い…この坂道もキツイ… 谷口「いょぅ!キョンちゃーん」 その名で呼ぶな、気持ち悪い 「ん?おぅ、谷口か」 谷口「昨日さぁ、「もしかして、生理?」ってナンパしたら、物凄い殴られたぞwwww」 笑い事じゃねぇよ…ってか、女の子に言ったらアカンだろ… と思いながらSOS団室へ行った… さてさて、ノックノック… ハルヒ「どぉうぞっ!」 うおっ!?吃驚した…なんっー大声だ… やれやれ、中に入るか… 入ると、不機嫌な団長様がいた… 何があったんだ? ハルヒ「どうもこうも無いわよ…あたしの大切な物が無くなったから…」 マジですか!?バレたらヤバイじゃねぇのか? ハルヒ サイド むー、むー、むー、どうしよう、どうしよう、むぅぅぅぅーー… 取りあえず、動揺は隠してっと… 「ねぇ、キョン…あんたの家のリビングに何か置いてなかった?」 キョン「はて?何も置いてなかったか?」 「そぅ…」 んー、追求してみるか… 「何か、家で変わった事無い?」 キョン「んー?あぁ、そういえば…妹がニヤニヤして見てただけだが」 え?妹ちゃんか?え?マジで? キョン「マジだ、妹が「キョンくんって、幸せ者だね!」と言ってたな…何で幸せ者なのか?」 …それって…それって… キョン「ハルヒ?どうした?」 みくる「ハルヒさん?どうしたのですか?」 い、い、い、い、い、 いやあぁぁぁぁぁぁ……いやぁぁぁぁぁ…いゃぁぁぁぁぁ…ぃゃぁぁぁぁぁぁぁ…ぃゃぁぁぁぁぁぁ……(エコー) キョン サイド ハルヒが…ハルヒが…真っ白に染まってる…な、何があったんだ? ん?と、言う事は 「古泉、閉鎖空間どうなってんだ?」 古泉「いえ、大丈夫ですよ…しかし、ハルヒさんは何やら慌ててる様子ですね」 ほっ…じゃ、何で…真っ白になったんだろうな… ハルヒ「あはっ…ははははっ…ははは…ガクッ」 みくる「ハルヒさん!?大丈夫ですか!?ハルヒさん!」 …妹ねぇ、妹に聞いてみるか おまけ 谷口「全国の女達のために、ナンパ成功のために、女達よ!俺は帰って来たーっ!」 …あら?いっけね、女子更衣室だわwww …… 「WAWAWA、忘れ物~」 女A「さっさと…」 女B「帰れーっ!」 きにゃああああああああああ… ハルヒ サイド ふっ…かーつ!!って、ここは保健室? 取りあえず、一刻も早く、キョンの家へ! みくる「あ、ハル「ごめんね、みくるちゃん!急いでるから!」 急がないと!ん?下からスースーするわねぇ………ピキッ! みくる「あっ、ハルヒさん!行っちゃいましたね…スカートのチャック壊れて直して貰った所なのに」 何と、ハルヒは、スカート穿いて無かったのである…勿論、パンツの色はピンク… 「き、き、きゃあああああ…」 みくる「!?」 「みーくーるーちーゃーんー!そーれーをーはーやーくーいーえー!」 みくる「す、すみませんでしたー!」 「結構恥ずかしかったわよ!…よし、直してありがとう!じゃ!」 ドドドドドドド… みくる「走るスピード速いですね…」 谷口 サイド ふっ、今、俺は何をしてるのかって? ふふふ…吊るされてるんだよね…レッテルも貼られてますっせ! [超変態][チャック魔][ナンパ男] …誰が水下さい… キョン サイド さて、俺は学校が終わり、家にいる… 妹に聞くために帰って来たのだからな 妹「お帰りー、キョンくん」 こいつ、ムカツクぐらいアイス食べやがって 「そういや、妹よ…ハルヒの鞄の中を見たのか?」 妹「うん」 やっぱり… 「見せてくれないかな?」 妹「いいよ」 と、言うわけで…簡単に手に入れた うむ…見た目は女の子らしい模様をしてる普通のノートだが…… 中身見てみるか …これはどういうことだ? 皆も見せてやりたい気分だが…いや、いい… ○月○日 初めてあった男の子がいた…へぇ、キョンって言うんだ ちょっとカッコいいわね …これって、最初にあった時の話が…待て待て、普通の人間は興味無かったのではないのか?ハルヒよ? ○月○日 SOS団初のくじ引きだ!キョンと二人で仲良く話したい!! ハルヒ…だから、あんな態度を… ○月○日 今日は、機嫌悪かったけど、夢の中でキョンと二人きりだった… あたしの願い叶ったわ!キスよ!キス!甘いレモンの味だったよ! 興奮して一人Hしたのは内緒よ なるほど…だから、寝れなかったのか… ○月○日 今日は、あたしの誕生日… ん?これは…そうか、俺が知った時に祝ってやったっけ? あたしの誕生日を祝ってくれたのは、ある一人の男の子だったわ その男の名前はキョン…あたしは、嬉しかったの… あのバカが「谷口から聞いて気付いたけど…誕生日おめでとうな」と言ってた めっちゃ嬉しかった…あたしは泣かないように我慢してたけど、あのバカが「泣くなら、泣けばいい」と あたしは、いっぱい泣いたわ…今までは孤独だった誕生日…でも、キョンから祝ってくれた… ありがとう、キョン…あたしは幸せ者だよ …ハルヒ…お前は、やっぱ普通の女の子だもんな… 他には本人にとって恥ずかしい文章もあるから、伏せておく ハルヒ サイド そういえば、あの日記に「一人Hした」やら 「妄想して鼻血出た」やら恥ずかしい事凄く書いちゃったっけ… 早く、回収しないと!ヤバイよ、ヤバイよ!お母さん! っつー訳で、家に着いた… ピンボーン キョン「はいはい、どなたですか?」 キ、キョン!? 「あたしよ、あたし」 キョン「ハルヒ?入っていいぞ」 お邪魔しまーす キョン「どうしたんだ?」 「妹ちゃんは?」 キョン「あぁ、どっかへ遊びに行った…ま、2時間したら帰って来るだろうよ」 え、えぇ~!?そ、そんなぁ~ 特別編 その1 ちょと、悪戯したくなったので、皆さんに紹介を ○月○日 キョンの家へ遊びに行った。 キョンが一階へ用事あるため降りたのを確認して部屋を探し回った結果… エロ本10冊も見つけた…その内、3冊だけ持って帰った。 バレませんようにと願ってる ○月○日 海の日、キョンの水着姿を見て興奮しそうになった。 あたしって、変態になったのかな?ヤバイ、ヤバイ ○月○日 大佐が言ってた 「性欲はもて余す」と ○月○日 何となく、部室でキョンの真似した。 その時に、みくるちゃんや有希に見られた… 恥ずかしかったよぉ~ ○月○日 谷口が言ってた 「ナンパは千斬り挑戦すると良い」と …でも、成功してないわね 特別編 その2 ○月○日 性 欲 も て 余 す ! 何となく書いてみた…寝よう ○月○日 キョンとデートしようかな…「死刑」って言えば来てくれるかな? それで、観覧車に乗って手を繋げ…あっあっ、鼻血鼻血!ティッシュ!ティッシュ! ○月○日 店員が間違って、AVビデオ入れたみたい…折角なので見ることにした… 正直分からなかった…あたしって、子供なの? ○月○日 キョンと一緒に寝る夢を見た…ドキドキした… でも、キョンの寝顔可愛いなぁ ○月○日 キョンの寝顔コレクションを隠す場所に困った… 取りあえず、下着を入れてある棚に隠した ○月○日 みくるちゃんめ!キョンを悩殺させる気か!? あたしだってー! この後、キョンに酷く怒られた… 泣くのを我慢して抵抗したあたしがいる その時のキョンはいつもの「やれやれ…」だった キョン サイド さて、ハルヒが来た訳だが何の用かね? 「何の用だ?」 ハルヒ「妹ちゃんに会いたい」 そうか… 「だったら、ゲームでもして暇つぶししないか?」 ハルヒ「そうね」 ハルヒ サイド あれから2時間経った 妹「ただいまー」 帰って来た! キョン「来たか…」 妹「ただいま、キョンくん!あ、ハルにゃんだ!」 キョン「妹よ、ハルヒがお前に話したい事あるとさ」 と言って退場した 妹「何?ハルにゃん」 「あの日記見た?」 妹「うん」 やっぱり… ハルヒ サイド 「ちょっと持って来てくれないかな?」 妹「うん、ちょっと待っててね!キョンくーん!」 え?…って事はキョンが持ってるって事?え?嘘でしょ? 妹「持って来たよー!はい!」 「え、あ、うん…ありがとう…」 ?何かキョンがあたしを見てニヤニヤしてる… ―――― さて、帰宅したのはいいけど… 日記を開くと「見たよ、ありがとうよ」 …え?嘘…見たの!?アレやコレや全て見たの? い、い、い、い、い… いやあぁぁぁぁぁぁ…いやぁぁぁぁぁぁぁ…いゃぁぁぁぁぁ…ぃゃぁぁぁぁぁぁ…(エコー あれから、一週間…話す事が出来なかったのは言うまでも無い… 完 谷口「さっさと、千人ナンパ斬りしようぜ」